ハマス最高指導者はカタール拠点に活動

 今回、もう1つの仲介役は、ペルシャ湾に面した小国・カタールでした。カタールは近年、各地の停戦交渉で重要な役割を果たしてきました。人口300万人、広さは秋田県よりやや狭い1万1000平方メートル程度しかないのに、世界有数のLNG(液化天然ガス)の輸出国です。

 カタールの強みは、イスラエルとハマスのいずれとも良好な関係を築いていることです。またカタールは米国とも深い関係にあります。2021年、米軍がアフガニスタンから撤退した際には、反米組織タリバンとの親密な関係を生かし、米国市民らの脱出を手助けしたこともあります。2023年にはイランに拘束されていた米国人5人の解放にも貢献しました。

カタールは米国とイスラエル、そしてハマスと深いパイプを持つ。写真は米ブリンケン国務長官(左)とカタールのムハンマド首相兼外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 カタールは米国の同盟国で、首都ドーハの郊外には米軍の空軍基地があります。それにもかかわらず米国の「敵」とも深い関係を維持している事実も見逃せません。

 ハマスとの間にも太いパイプがあり、2012年には当時のハマド首長(現在のタミム首長の父)がガザを訪問しています。2007年にハマスがガザを実効支配して以降、アラブの国家元首による初めての訪問でした。ガザ地区に多額の資金を援助し、ドーハにはハマスの政治事務所があります。ハマス最高指導者のハニヤ政治局長はドーハを拠点に活動しています。