同じアラブでもエジプトとハマスは微妙な関係
互いに相手の存在を認めない国・組織が停戦に合意するためには、仲介役が必要です。当然ながら、両者と太いパイプを持ち、かつ、影響力がないと仲介役は務まりません。そして、停戦協議では普通、仲介国の側にも「紛争のこれ以上のエスカレートは避けたい」という事情があります。
今回の仲介国の1つ、米国はイスラエルの「後ろ盾」として、軍事・経済面で多大な支援を続けてきました。両国が特別な関係を維持してきたのは、米国内に有力なユダヤ系住民が多いことが一因です。
しかし最近、米国の大学ではガザへの攻撃を非難する学生のデモが拡大しています。ガザへの攻撃が激しくなるにつれ、デモも拡大し、逮捕者も続出。この秋の大統領選で苦戦が予想されるバイデン大統領にとっては事態の鎮静化が急務という事情がありました。
エジプトは1979年、イスラエルと国交を結んだ最初のアラブの国です。これまでも中東和平の重要な会議の舞台を提供してきました。ガザ南部ラファと境界を接する隣国でもあります。イスラエルがラファを本格攻撃すれば、逃げ場を失った住民がエジプト側に押し寄せるのは必至。これは、エジプト政府が最も恐れている事態です。
また、エジプトとハマスは同じアラブ人でありながら、微妙な関係にあります。ハマスの源流は、エジプトのイスラム組織「ムスリム同胞団」です。アラブの民主化運動「アラブの春」後の一時期、エジプトではムスリム同胞団が政権を握りましたが、その前後は厳しく弾圧される存在でした。それでもエジプト国内には現在もこの同胞団とハマスを支持する人は多数存在しており、その動向は現政権を揺るがしかねません。