イスラエル国内でも停戦支持が多数派

 実は、イスラエル国内でも停戦を支持する人は多数派です。イスラエル民主主義研究所(the Israel Democracy Institute)がこの5月初めに実施した世論調査によると、同国内では人質の解放を最優先すべきだと答えた人が62%に上りました。停戦せずにラファ侵攻という軍事行動を優先すべきだと回答した人は31.5%にすぎません。

図:the Israel Democracy Instituteの資料およびイスラエル・メディアの報道からフロントラインプレス作成
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 イスラエルのネタニヤフ首相は汚職疑惑で起訴されており、戦闘を長期化させ、首相の座にとどまるほうが得策と考えている――と疑念を抱く人が少なくないのです。ネタニヤフ政権は極右や右派、宗教政党の寄り合い所帯です。「ハマス壊滅」を推し進める極右の協力が得られなければ、政権は崩壊してしまうでしょう。

 イスラエルでは、ネタニヤフ氏の退陣、総選挙実施を求める大規模なデモも続いています。今回の停戦協議は実りませんでしたが、交渉は今後も続くはずです。その間、ネタニヤフ氏に対する停戦圧力は国内外で一段と高まりそうです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。