(篠原 匡:編集者・ジャーナリスト、蛙企画代表)
超高齢化と人口減少の時代に突入している日本にとって、僻地の集落が衰退し、消えていくのは、もはや避けられないことだ。
もっとも、消えゆくコミュニティであっても、そこで暮らす人々の営みがあり、長年、堆積した時間の“地層”がある。
それは、出羽島(てばじま)でも同じだ。
出羽島とは、徳島県牟岐(むぎ)町の対岸にぽっかりと浮かぶ小さな島。ゾウリムシのような形をしており、牟岐港から連絡船に乗れば、15分ほどで辿り着く。島の外周は約3キロ。数年前の台風で島を回る遊歩道の一部が崩落したが、1時間もあれば、島をぐるっと一周できる。
島の大半はこんもりとした小さな丘で、北側に開けた港の周囲に100軒ほどの木造住居がひしめき合っている。戦前戦後の一時期は、この小さな島に1000人以上が暮らしていたという。