出羽島に特有の建築様式
この島には、島独自の暮らしや景観が遺されている。
例えば「ネコ車」と呼ばれる手押し車。最近は自転車を押す住民も増えているが、かつて島の人々は荷物の運搬にネコ車を利用していた。今も島を歩けば、それぞれの家の軒下には自作のネコ車が置かれている。
「重伝建」の町並みも出羽島特有のものだ。
出羽島に人が住むようになったのは江戸時代後期。その後、明治から大正にかけて町家風の漁師小屋が建ち並ぶ独特の景観が形成された。
その建物には、土庇(どびさし)やミセ、出格子、炊事場に続く通り土間など、四国南東部に特有の建築様式が見て取れる。
ミセは折りたたみ式の雨戸で、上ミセをあげると庇に、下ミセを下げると縁台になる。通り土間も、漁師が長靴を履いたまま炊事場に行けるように造られたものだ。
こうした出羽島の町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)にも選ばれている。
ただ、そんな出羽島も、今は静かに朽ちようとしている。