崩れ落ちる島の生活

 高齢化と人口流出の結果、島民の数は40人を切るまでに減少した。残っている島民も、その大半は70歳以上だ。

◎出羽島の何げない日常(写真:木村肇)出羽島の何げない日常①(写真:木村肇)
◎出羽島の何げない日常(写真:木村肇)※大根出羽島の何げない日常②(写真:木村肇)

 頼みの漁業は気候変動の影響で漁獲高が激減しており、島の生活に憧れてきた移住者も、コロナ禍の中で島を去った。

 重伝建の町並みは、櫛の歯がかけたように空き家になり、所有者の手が入らない建物は崩れ落ちている。

◎所有者の手の入らない建物は痛みが激しい(写真:木村肇)所有者の手の入らない建物は痛みが激しい(写真:木村肇)
◎出羽島で見つけた超狭小住宅(写真:木村肇)出羽島で見つけた超狭小住宅(写真:木村肇)

 既に商店と呼べるものは一つもなく、自動販売機が2台残っているだけ。日本に数多ある限界集落と同様、このままの状況が続けば、将来的な消滅は避けられない。

 そんな消えゆく島の断面を記録するため、蛙企画は出羽島部落会の会長を務める田中幸寿氏の協力の下、2022年9月から1カ月あまり出羽島に家を借り、写真家に島で暮らしてもらいながら写真を撮るというプロジェクトを始めた。言うなれば、出羽島版のアーティスト・イン・レジデンスだ。

 実際に1カ月間、出羽島で暮らしたのは「記憶」をテーマに国内外で活動する写真家の木村肇。島民に話を聞き、言葉を紡ぐために私も島に通った。

◎写真家の木村肇(写真:Retsu Motoyoshi)写真家の木村肇(写真:Retsu Motoyoshi)
◎木村が1カ月強、寝泊まりした「母屋」。田中幸寿さんの生家(写真:木村肇)木村が1カ月強、寝泊まりした「母屋」。田中幸寿さんの生家(写真:木村肇)

 なぜそのようなことをしたのか。