目的を思い出させるたった1つの呪文

 だが、ここにシュダンスキの幻惑物質を解毒するシンプルな呪文があるのでここで紹介したい。それは以下の呪文である。

「モクテキハナンデスカ?」

 シンプルな呪文だが、効果は絶大だ。そもそもシュダンスキの幻惑物質は目的を忘れさせるため、この呪文で改めて、目的を思い出させる、もしくは忘れているのであれば、改めて設定しなおせばいいだけなのだ。初めから「目的」を考えず「手段」に飛びついてしまうような重篤な症状の場合、目的をゼロベースで考えざるを得なくなるので効果は抜群である。

「手段と目的をはき違えるな!」という常套句と何が違うのか、と不思議に思う読者もいるだろう。だが、「モクテキハナンデスカ?」とは似て非なるものだ。

 2つのセリフの文末に、その違いが凝縮されている。「!」と「?」の違いだ。

DXなど、本来の目的を忘れてはいないか(写真:metamorworks/Shutterstock)

 一方の「!」は「命令」で、相手に考える余地を与えない、もう一方「?」は「問い」で、相手に考えさせる。「考える現場」と「考えない現場」では、どちらが良いか。自律的に課題を解決していく組織を目指すのであれば、「?」の方がパワフルであることがよくわかるであろう。

 似て非なるものを混同してしまう例えに「ミソクソ」という言葉がある。「ミソ」も「クソ」も色と触感も似ているが、全く違うものであるのは言うまでもない。一生忘れられないインパクトがある言葉を考え出した先達の慧眼には脱帽である。

 学ぶことの最大の障害は答えを教えることではないか? それは、自分で答えを見つける機会を永遠に奪ってしまうからである。自分で論理的に考えて、答えを見つけ出すのが、人が学ぶための唯一の方法だと私は信じている。人が考えるようになるためには「!」マークよりも「?」マークの方がよっぽどいい。 

 世界で1000万人が読んだベストセラー『ザ・ゴール』の著者ゴールドラット博士の言葉である。「手段と目的をはき違えるメカニズムについては、以下のYouTubeで解説しているのでご覧いただきたい。