- あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
- 第12回は、最新の経営理論に飛びつき「ベキ、ベキ」と周囲に噛み付く「ベキ虫」。MBA留学帰りが配属されがちな経営企画などに生息する。
- 評論家的に問題の外側から発言するだけ嫌われがちだが、実は会社への愛は人一倍で、「お前がやってみろ!」の一言で「益虫」に突然変異するケースもある。(JBpress)
(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)
名称:ベキ虫
職場へのダメージ:★☆☆☆☆
主な生息地: 会社の経営企画室、コンサルティング会社、アカデミアに生息する。頭でっかちで、胸に分厚い書物のようなものを抱えているのが特徴。ベキ、ベキ、ベキと鳴き声がするので発見は容易である。
特徴:海外から新しいキラキラとし経営手法が紹介されると周囲に集ってくる習性がある。「ベキ虫」がはびこると、3文字の英単語が並んだ手法をやたら口にするようになり、分析や提言などが書かれた分厚い資料が職場にあふれるようになる。ただし、自分で実行した経験はなく、実践して成果を出すのは苦手であり、常に問題の外側に自分を置きたがる習性があり、時には「評論家」と揶揄される。キャリア指向が強く、会社の居心地が悪くなると、ジョブホッピングして別の会社に移り続けることが知られている。
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知識は豊富だが実践は苦手な「ベキ虫」
「お前が来てやってみろ!」
もし、あなたの職場でそう叫びたくなる場面があったら、そこには「ベキ虫」が発生している可能性が高い。ベキ虫は新しい経営手法が世の中に紹介されるたびに、「うちもやるベキ」と騒がしく叫び始める。「ベキ、ベキ、ベキ」とうるさく鳴くので、うっとうしくって何とかしたいと願っても、退治は困難である。
なぜならば、ベストセラーのビジネス書やマスメディアに掲載された他社のベストプラクティス、さらには権威ある大学教授の論文や記事を盾に口達者に話をしてくるので、理屈で対抗するのは極めて困難だからだ。
それだけではすまない。ベキ虫はいったん職場に侵入すると、弁舌巧みな強みを活かして、組織のトップまでたちどころに味方につけ、経営方針の中にまでいつの間にか忍び込むようになる。