組織と組織の間に生息し、見えない「壁」をせっせとつくるソシキノカベ虫(イラスト:きしらまゆこ)
  • あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOCの第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
  • 第9回は「ソシキノカベ虫」。生産と販売など、組織と組織の間に生息し、見えない「壁」をせっせと作る。気がつくと特定の組織が制約となって仕事全体が停滞する。
  • 「組織の壁をなくそう!」などとスローガンを掲げても、この害虫は退治できない。必要なのは、「タテ」の組織ではなく「ヨコ」から仕事を見直し、制約を取り除く全体最適の働き方改革を実施することだ。

(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)

名称:ソシキノカベ虫
職場へのダメージ
:★★★★☆
主な生息地:大企業や行政組織をすみ家とする。「組織の壁を壊そう!」「全体最適で仕事をしよう!」などのスローガンが貼られた組織の壁に必ず生息しているとされる。行政組織では、「タテワリ虫」とも呼ばれる。
特徴:組織と組織の間に入り込み、せっせと「組織の壁」をつくり、人に部分最適の行動をさせる。組織連携を阻み、部分最適の組織風土病を引き起こす原因と言われている。組織の能力を極端に低下させ、放置すると、組織間の軋轢(あつれき)を招き、最悪の場合、経営危機を招く。「生産」と「販売」の間に広く観察されているが、この原因の解明が待たれている。
>>他の害虫(イラスト)を見る(連載未登場の害虫は次回以降、解説していきます)

部分最適を引き起こす「ソシキノカベ虫」

「うちの職場は、なぜこんなに部分最適の仕事の仕方ばかりするのだろう……」

 もし、こんな疑問を持ったことがあるなら、あなたの職場には「ソシキノカベ虫」が侵入している可能性が高い。ソシキノカベ虫は職場の周りに「組織の壁」をせっせとつくり、他の部署の仕事を見えなくする。壁に囲まれると他の部署が見えなくなり、自部門の仕事の効率向上だけに集中できるメリットがあるとの錯覚に陥りやすい。部分最適の行動を引き起こさせ、他の組織との連携が極端に悪くなる。会社全体の仕事の流れは悪くなり機能不全に陥り、業績が大幅に低下してしまう。

 それぞれの職場に部分最適の評価指標があったら、問題はさらに深刻になる。他の組織との連携はお構いなしで軋轢を招き、会社を経営危機に陥れることさえあるので注意が必要だ。

会議やスローガンによる対策は効力なし

 ソシキノカベ虫は「生産」と「販売」という組織の間に特に多く発生することが広く知られているが、理由はいまだ解明されていない。「組織の壁」を壊そうと「生販会議」のようなものが立ち上がると暴れ出す。

岸良 裕司(きしら・ゆうじ)  ゴールドラット・ジャパン最高経営責任者(CEO)
全体最適のマネジメント理論TOC(Theory Of Constraint:制約理論)の第一人者。2008年4月、ゴールドラット博士に請われて、イスラエル本国のゴールドラット・コンサルティング・ディレクターに就任。主な著書・監修書は『ザ・ゴール コミック版』(ダイヤモンド社)、『優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか』(ダイヤモンド社)、『子どもの考える力をつける3つの秘密道具』(ナツメ社)など。東京大学MMRC 非常勤講師、国土交通大学 非常勤講師、国際学会発表実績多数。

「生販会議」で火花が出るような対立が観察されない場合、さらに深刻な状況であることが多い。なぜならソシキノカベ虫は「会議中は何を言っても無駄」ということを学習し、「生販会議」に対する耐性を備え、会議中はじっと静かに潜む代わり、日常あちこちで火花を散らす対立を引き起こしていることが多々あるからだ。

 トップが「組織の壁を壊せ!」と号令を出したり、「全体最適で仕事をしよう!」とスローガンを掲げたりしても、ソシキノカベ虫には全く効力がない。そういった号令やスローガンは、ソシキノカベ虫が発生していることを社内外に広くアピールするだけだ。