- あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
- 第1回は、何でもかんでも抱え込む「マルチタスク虫」。そんな害虫が一匹でもいたら、あっという間に職場全体に被害が広がり、業務を麻痺させてしまう。
- マルチタスクで忙しくしていると「できるヤツ」と見られがちだが、その実態は職場で一、二を争う危険な害虫だ。退治するために必要な、たった1つの特効薬とは?(JBpress)
(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)
【会社の害虫図鑑】
名称:マルチタスク虫
職場へのダメージ:★★★★★(最悪)
主な生息地:ダメ上司の周辺
特徴:あれもこれも最優先、目が回るほど忙しい現場によく見かけられる。主な被害として、仕事の生産性の劇的低下、仕事の質の劇的低下、手直し・手戻りなど無駄な仕事の増加、ES(社員満足度)の低下、退職者の増加、メンタル問題多発など。
>>他の害虫(イラスト)を見る(連載未登場の害虫は次回以降、解説していきます)
ダメ上司のもたらす深刻なダメージ
「一生懸命頑張ったのに、今日何を完了できたんだろう……」
こんな思いを抱く人が1人でもいたら、その職場には「マルチタスク虫」が蔓延している可能性がある。
「マルチタスク虫」のダメージは深刻だ。あれもこれも最優先で、現場は集中して仕事ができない。必然的に仕事の質が下がる。すると、手戻り、手直しが常態化し、ムダな飛び込みタスクが増え続ける。こなさなければいけない仕事は増えるばかりで、納期遅れも頻発する。
遅れを取り戻すために残業も増える。当然ながら、従業員満足度(ES)も下がり、退職者も増え、残ったメンバーのプレッシャーもきつくなり、メンタルを病む人も増えてくる。
マルチタスク虫の増殖が加速する原因は、主に優先順位を付けられないダメ上司だ。「顧客第一」という、正論すぎて部下が反論する余地がないスローガンの下、「すべてのタスクを最優先せよ」と言うかのごとくプレッシャーをかけてくる。その一方で、何もかも丸投げし、現場は疲弊し続ける。頑張っても、頑張っても成果がでない。だから、業績もどんどん下がる。
「すべて最優先」という暗黙のプレシャーの下で様々なタスクが降ってくると現場はどうなるだろうか?
この図は、その様子をイメージしたもの。仕事の大小にかかわらず様々なタスクが現場に放り込まれて、フン詰まり状態だ。こんな状態でケツを叩いて仕事の流れを加速しようとしても、さらにフンは排出されるどころか詰まるばかりである。