あなたの職場の「常識」は正しいのか?

「あれもこれも最優先」という職場を麻痺させるマルチタスク虫となっていた上司は、職場をダメにしてやろうと考えていたのだろうか? そんなことはないはずだ。マルチタスク虫が職場に蔓延したとしても、本当に悪いのは上司ではない。

 人のせいにしても問題は解決しない。世界で1000万人が読んだ『ザ・ゴール』の著者で、イスラエルの物理学者であるゴールドラット博士は、「『思い込み(Assumption)』のせいにするべきだ」と説いた。つまり、悪いのは上司ではなく、上司を動かしていた「思い込み」というわけだ。

 では、マルチタスク虫を蔓延させる思い込みとは、なんだろうか? 

「どんな仕事でも『最優先』する姿勢で取り組めば、なんとかなる」

 これが、「顧客第一」という理想の下、上司をマルチタスク虫にさせていた思い込みだ。優先する仕事を決めようとしても結局、「あれもこれも最優先」という状況を招き、職場を麻痺させる原因になっていた。

 仕事をするのは人だ。人は、集中しないといい仕事はできない。マルチタスクを抱えた状態で「あれこれこれも最優先」というプレッシャーの下では集中できないのだ。だからこそ、優先順位を判断する揺るがない基準を職場全体で持ち、上司と部下が合意のもとで、仕事によっては「あえて遅らせる」ことも重要になる。

 優先する仕事を決めるのではなく、その判断基準を決める。シンプルな発想の転換が目覚ましい成果をもたらすことになる。

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