CheckとActionばかりの「シーエー虫」(イラスト:きしらまゆこ)
  • あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
  • 第2回は「シーエー虫」。「PDCA」のPlanとDoは丸投げするのに、Checkでダメ出しをして自らActionに乗り出すことで自己満足している上司や、その取り巻きのこと。
  • 納期の遅れや予算超過の責任は「報連相」を適切にしなかった部下に押し付け、自分は事態を挽回したとしてヒーロー気取り。そんな害虫を退治する特効薬は、シンプルな「3つの質問」だ。

(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)

【会社の害虫図鑑】
名称シーエー(CA)虫
職場へのダメージ:★★★★★(最悪)
主な生息地:納期遅れ、予算超過が頻繁に発生する会社の会議室や管理者の周辺
特徴:上司という圧倒的に優位な立場にあぐらをかき、部下にダメ出し・叱責するのが特徴。主な被害は、納期遅れ、予算超過、会社の収益の悪化、顧客満足度やモチベーションの劇的低下など。大量発生すると風通しの悪い職場という風土病を引き起こし、治療に長期を要することがある。
>>他の害虫(イラスト)を見る(連載未登場の害虫は次回以降、解説していきます)

 

「シーエー虫」が引き起こす深刻なダメージ

「今になって、なんでこんな大問題が出てくるんだ!」

 納期ギリギリになって、こんな怒号が会議室や職場から聞こえてきたら、そこには「シーエー虫」が蔓延している可能性が高い。「シーエー虫」は、PDCA(Plan、Do、Check、Action)の後半のCheck、Actionの頭文字から名付けられたと言われている。

(写真:Bankrx/Shutterstock.com

 この害虫の存在にいち早く気づいたとされているのが、マツダ元会長の金井誠太氏だ。金井氏は、CAにこだわるマネジャーの弊害を説いている。つまり、Plan、Doの段階では部下に丸投げしておいて、Check段階で部下にあれこれ指示し、自らAction=改善に乗り出す上司は、それによって自己満足を得ているのだと。そんな金井氏が作成したシーエー虫を発見するためのチェックリストは、以下の通り。

・最初は部下に仕事を丸投げ
・納期が迫った時に、進捗をチェック
・納期直前になって、納期が間に合わないことを発見
・マネジャー自らが先頭に立って対策

(写真:アフロ)

 納期が迫っていれば、マネジャー自ら先頭に立って必死に対策しても、多少の納期遅れや予算超過は免れない。その責任はすべて現場のせいになる。一方、納期ギリギリで発覚した大問題を多少の損失だけで抑えて挽回したマネジャーは活躍しているように見え、高く評価される。

「やっぱり、私がいなきゃダメだ」

 そんな自己満足に陥っていそうなマネジャーが職場にいたら、すでにシーエー虫が発生している可能性が高い。

 言うまでもないが、上司は大抵の場合、部下よりも経験もあるので物事にうまく対処できる。しかも、問題が発生するたびに、上司の優位性はさらに高まる。一方で、部下は自信をなくし、モチベーションも下がり、メンタルヘルス問題も発生するようになる。

岸良 裕司(きしら・ゆうじ)  ゴールドラット・ジャパン最高経営責任者(CEO)
全体最適のマネジメント理論TOC(Theory Of Constraint:制約理論)の第一人者。2008年4月、ゴールドラット博士に請われて、イスラエル本国のゴールドラット・コンサルティング・ディレクターに就任。主な著書・監修書は『ザ・ゴール コミック版』(ダイヤモンド社)、『優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか』(ダイヤモンド社)、『子どもの考える力をつける3つの秘密道具』(ナツメ社)など。東京大学MMRC 非常勤講師、国土交通大学 非常勤講師、国際学会発表実績多数。