- あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
- 第11回は、需要予測をしている営業や生産などの部署に発生する「ヨソウ虫」。昨今のAI(人工知能)などを活用したDXブームで、生息域を拡大中だ。
- 「ヨソウ」は逆から読めば「ウソヨ」となることからもわかるように、そもそも信用してはいけない。「当たらない」ことを前提にしたオペレーションが必要だ。(JBpress)
(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)
名称:ヨソウ虫
職場へのダメージ:★★★★☆
主な生息地:営業や生産など、需要予測をしている部署に発生する。腹部に水晶玉のような形をした突起がある。近年はDXを推進するIT部門にも出現するようになり、「DXアオリ虫」と同時に発見されることが多い。
特徴: 「ヨソウ虫」が発生すると、需要予測が当たらなくなり、過剰在庫と欠品を引き起こし、会社の利益と売り上げを蝕む。営業と生産の間に険悪な関係を引き起こす根本原因ともいわれている。一部の地域では「ヨソク虫」とも呼ばれて、汚物に似た強烈な悪臭を放つ特徴に由来するとされる。
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なぜ需要予測は当たらない?
「もっと正確な需要予測はできないのだろうか……」
もし、こんな思いを抱いたことがあるなら、そこに「ヨソウ虫」が発生している可能性がある。ヨソウ虫が発生すると、需要予測が外れ、過剰在庫と欠品が頻繁に起きるようになる。過剰在庫をディスカウント処分すれば利益が減り、欠品は売り上げが上がらない原因となる。
その責任は需要予測を外す営業のせいと生産側は考え、一方、営業側は市場の変化に柔軟に対応できない生産のせいであると考える。生産側は欠品すると営業に責められるので、「よかれ」と思って営業の需要予測よりも多めに生産するようになる。
だが、それが過剰在庫の原因になることも少なくない。すると過剰在庫を処分するために営業に余計な負荷かかり、営業と生産の関係はさらに険悪になる。
ここで「予想」にまつわる衝撃の事実を紹介しよう。「予想」をカタカナで書くと「ヨソウ」となるが、それを後ろから読むと「ウソヨ(嘘よ)」となるのだ。「予想」を辞書で調べると以下のように書いてある。
よそう 【予想】
ある物事の今後の動きや結果などについてあらかじめ想像すること。また、その想像した内容。「暴落を―する」「―がはずれる」「―を上回る」
[広辞苑 第七版]
そもそも「予想」という言葉はその言葉の定義上も当たらないことを前提としている。もう一つ「予測」にまつわる衝撃の事実も紹介したいが「ヨソク」を後ろから読むと汚い話になるので、ここでは控えさせていただく。だが「ヨソク虫」が汚物に似た強烈な悪臭を放つ理由はここで明らかだろう。