品質不正を招く「シワヨセ虫」。現場の社員はみな優秀でまじめなのに、なぜ?(イラスト:きしらまゆこ)
  • あなたの仕事がうまく回らないのは、職場に巣食う「害虫」のせいである――。全体最適のマネジメント理論TOC(Theory of Constraints=制約理論)の第一人者、岸良裕司氏(ゴールドラット・ジャパンCEO)が、会社を停滞させる構造的な問題を害虫に見立て、その特徴と対処の仕方を、実例を基に伝授する。
  • 第14回は、品質不正など昨今の不祥事企業の現場で多く見られる「シワヨセ虫」。納期に対する過度なプレッシャーにさらされ、納期以外の必要な仕事を無視し不正に手を染めてしまう。
  • 優秀でまじめな社員が多い現場ほど発生しがちな害虫を退治する特効薬とは?(JBpress)

(岸良裕司:ゴールドラット・ジャパンCEO)

名称:シワヨセ虫
職場へのダメージ
:★★★★★(最悪)
主な生息地: 品質不正問題などの不祥事に揺れる会社で数多く発見されている。最近の調査では、風通しが悪い組織で、特に納期のプレッシャーがきつく、しわ寄せが集中する現場の末端で多く発生していることが明らかになった。「走りながら考えろ!」といった、スピード納期を求めるスローガンが多用される現場に大量発生することが知られている。
特徴:人の視神経を麻痺させ、「納期」以外を見えなくする毒ガスを放つ。社会問題にもなる品質不正を引き起こす温床になりかねないため、早期発見・対策が重要である。
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「シワヨセ虫」のすみ家

・仕様がいつまでも決まらない
・仕様がコロコロ変わる
・バタバタしていて集中できない
・手直し多発
・納期遅れ

 いくら現場が一生懸命がんばっても、これらの状況が日常的に起きているのなら、「シワヨセ虫」があなたの職場に忍び込んでいる可能性が高い。

岸良 裕司(きしら・ゆうじ)  ゴールドラット・ジャパン最高経営責任者(CEO)
全体最適のマネジメント理論TOC(Theory Of Constraint:制約理論)の第一人者。2008年4月、ゴールドラット博士に請われて、イスラエル本国のゴールドラット・コンサルティング・ディレクターに就任。主な著書・監修書は『ザ・ゴール コミック版』(ダイヤモンド社)、『優れた発想はなぜゴミ箱に捨てられるのか』(ダイヤモンド社)、『子どもの考える力をつける3つの秘密道具』(ナツメ社)など。東京大学MMRC 非常勤講師、国土交通大学 非常勤講師、国際学会発表実績多数。

 外部要因でいくら仕事が遅れても、納期はすでに決まっている。納期遅れは決して許されることはない。

「何としても納期を守れ!」

 こんな号令で、到底守られるはずがない厳しい納期に追い詰められている現場に強いプレッシャーをかけると、シワヨセ虫は人の視神経を麻痺させ「納期」以外は見えなくする恐ろしい毒ガスを放つ。この毒ガスのせいで納期以外の必要な仕事が抜け落ち、これが品質問題を引き起こす温床となる。