岸田首相による一か八か解散の可能性

 岸田首相があくまでも長期政権を目指し、かつ秋の総裁公選で続投が難しいと判断すれば、一か八かで早期の衆院解散に踏み切る可能性がある。

 内閣支持率が低迷した状況下での衆院解散・総選挙は、与党過半数割れにつながりかねないため、通常は選択されない。だが、現在は野党が分裂、対立している。

 仮に与党が敗北しても、2009年のような政権交代に至るわけではなく、連立政権のパートナーを組み替えて自民党が与党としての地位を維持する選択肢がある。

 総裁公選への出馬や勝利が難しいと判断すれば、支持率如何にかかわらず早期の衆院解散に踏み切るインセンティブが岸田首相には存在する。

 岸田首相が衆院を解散する場合、通常国会会期末までのタイミングが有力だ。延長がなければ6月23日が会期末。そうなると、6月末から7月にかけて総選挙が実施されるだろう。

 家計にとっては、ちょうど夏のボーナスが支給され、かつ春闘の大幅ベースアップが実際の賃金に反映される頃であり、所得税・住民税減税の恩恵を受ける頃にも重なる。総選挙を実施するタイミングとして選ばれやすい。

<衆院補選の影響は?>
 4月28日に控える衆院補欠選挙は、政治情勢にどのような影響を与えるであろうか。

 自民党の候補が出馬している島根1区で敗北となれば、「岸田おろし」が本格化するとの見方もある。しかし、上述の通り、派閥のほとんどが解散した状況下では、実際に倒閣に至る可能性は低いように思われるので、岸田政権は当面継続しよう。

 あえて挙げれば、岸田首相が総裁公選前に衆院解散に踏み切るリスクシナリオの可能性が低下し、岸田政権が総裁公選まで継続するメインシナリオの可能性を高めると思われる。

 逆に、島根1区で自民党が勝利を収めれば、早期解散のリスクシナリオの可能性を高め、早期解散見送りのメインシナリオの可能性を低下させる。それでも、メインシナリオとリスクシナリオの位置づけを逆転させるには至らないイメージだ。