合法化していないのはG7で日本だけ
現実的には、日本国内でのスポーツベッティング導入には、課題が山積しており、当面は議論が動き出す気配はない。
「地域×スポーツクラブ産業研究会」が最終的に15回の開催を経て、2022年9月に出した最終提言「『未来のブカツ』ビジョン」でも、財源創出手段として、学校施設の民間開放による収益化や複合施設化による稼働率、収益力の向上などの「学校不動産の価値最大化」や、「スポーツ振興くじの更なる活用」などが提言され、スポーツベッティングという言葉は出ていない。スポーツ庁の地域移行に向けた実証事業でも、費用負担の支援は国費でまかなわれている。
ただ、国内のスポーツ産業の市場規模は、今後の成長が期待され、スポーツ庁の第3期スポーツ基本計画では、2012年の5.5兆円だった市場規模を25年までに15兆円へ拡大する目標が定められている。
スポーツベッティングは市場規模が大きく、G7(主要7カ国)でスポーツベッティングが合法化されていないのは日本だけだ。海外からは日本のスポーツが賭博の対象となっているという現実の中、日本としてどう向き合うのかは、まだ見据えられていない。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。