日本法人謝罪「バービー」抱き合わせの「オッペンハイマー」がヒットだが…
ヒロシマ・ナガサキから78年、原爆のサスペンス映画が表す米国人のスタンス【JBpressセレクション】
2024.3.26(火)
高濱 賛
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10日後、放射性物質は46州とカナダに拡散
そうした動きに追い風となるプリンストン大学、コロラド大学ボールダー校などの科学者が共同で行ってきた研究成果が7月20日公表された。
それによると、トリニティ・サイトで投下された原爆は4日後には2400キロ離れたカナダ東部トロント郊外のクロフォード湖にも拡散されていたことが判明した。
湖底の推積物からプルトニウムが検出されたのである。
その他、研究結果では10日間に放射性物資は全米46州やカナダ、メキシコにも拡散していたことも分かった。
研究チームのセバスチャン・フィリップ博士は、こうコメントしている。
「透明性のあるデータを共有することで公の論議に貢献したい。それによって核政策決定のために利用してほしい」
「トリニティ・サイト(での原爆実験)再検討は人新世の始まりに関する理解を深める」
(News 2023-07-21 | Princeton Science & Global Security)
ナチス・ドイツから米国に亡命、23歳にして物理学博士になり、理論物理学で世界の頭脳と言われたオッペンハイマー氏だが、唯我独尊で容共主義者。ヒンズー教に傾倒するユダヤ人だった。
フランクリン・ルーズベルト第32代大統領は、国家の命運を懸けた「マンハッタン計画」の統括研究者に同氏を選んだ。
ソ連との新兵器開発競争では勝利した。
しかし、同計画参加の裏切り者(疑われたオッペンハイマー氏ではなく、英国に逃げた確信犯のテッド・ホール氏ら)が最高機密を漏洩したことでソ連も4年後には原爆を持つ。
(New York Times)
米国にとっての「英雄」であり、かつ人類を核世界に導き入れた「原爆の父」が、なぜハリウッドの檜舞台に踊り出たのか。
広島への原爆投下を認める米国人は、当時は85%。42年後の2004年には57%と3割減。正当化する者は46年後の1991年には63%だったが、70年後の2015年には56%と減っている。
(Declining Support in Both the U.S. and Japan for America's Bombing of Hiroshima and Nagasaki | Pew Research Center)
「オッペンハイマー」現象が、米国人の広島・長崎原爆投下に対するスタンスへの変化を示す兆候はない。
我々日本人は、この映画をサスペンス娯楽評伝映画として、「忘れられない夏」の思い出などとして観るわけにはいかない。
78年目のヒロシマはついにそこまでやって来ている。