日本法人謝罪「バービー」抱き合わせの「オッペンハイマー」がヒットだが…
ヒロシマ・ナガサキから78年、原爆のサスペンス映画が表す米国人のスタンス【JBpressセレクション】
2024.3.26(火)
高濱 賛
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グラウンド・ゼロに白い花はなかった
私事で恐縮だが、筆者は日本の新聞社のワシントン特派員当時、実はこの実験跡を米国防総省の取材協力を得て、米軍ヘリで上空から爆心地に降り立ち、地上から取材したことがある。
同行したのは著名なカメラマン、T記者だった。
同氏が拡大魚眼カメラで撮った上空写真は1975年の1月元旦号を飾って、大きな反響を呼んだ(新聞の縮刷版が入手できず、詳細は記憶に頼ったもので申し訳ない)。
現在では年に2回公開されているが、当時は軍の禁止区域になっていた。
取材のきっかけは当時の編集幹部からワシントン支局に届いた連絡だった。
曰く「トリニティ・サイトに今、白い花が咲き出したらしい。それをチェックせよ」。
結果的には、「白い花」は見つけ出せなかったが、大きくへこんだグランド・ゼロの周辺には、緑のガラス状の小石「トリタイト」と小さな虫を見つけたのを覚えている。
当時は、原爆実験周辺の村落住民が被爆したという話は聞かなかった。
しかし、その後110キロ離れたトゥラローサ(Tularosa)に住む住民の中から脳腫瘍や唾液腺ガンに罹る者が続出した。
米国には「放射線被ばく補償法」(Radiation Exposure Compensation Act=2022年制定)があるが、トゥラローサ住民は法定適用基準を満たしていないとの理由から補償を受けていない。
年2回のトリニティ・サイト公開日には観光客向けに抗議デモを行っている。
(Civil Division | Radiation Exposure Compensation Act)
(Energy Employees Occupational Illness Compensation Program Act (EEOICPA) )
それが今回の「オッペンハイマー」で脚光を浴び、主要メディアも報道し始めた。
核兵器には無関心な(?)米国民にとっても、史上初の被爆者が広島の収容所にいた米兵捕虜ではなく、本土の米国人だったという「事実」は見逃せない。