設備の維持費、AMはFMの約50倍

 AM(Amplitude Modulation)ラジオ放送は「中波放送」とも呼ばれ、日本では526.5〜1606.5 kHzという周波数を使用しています。AMの特徴は、電波が遠くまで届くということ。電波は山々を回り込んで伝わるため、ラジオ事業者は出力の大きな親局を軸にして各地に中継局を配置しています。

 短所は雑音が多いことや建物内では聴き取りにくいことです。また、送信用設備も大掛かりです。川原や海辺などの平坦な敷地に高さ100メートル程度というアンテナが必要です。

出所:総務省資料
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 一方、FM(Frequency Modulation)ラジオ放送はどんな特徴があるのでしょうか。「超短波放送」とも称されるFMは、建物内でも聴こえやすく、雑音もあまり入りません。そのため「FMの方が音質がいい」「音楽を聴くなら断然FMだ」と言われてきました。ただし、放送の届く範囲は数十キロから100キロ程度にとどまります。

 事業面から見ると、AMとFMの最大の差は設備の維持費用です。老朽化が進むと、送信設備の更新は避けられませんが、AMの場合、巨大なアンテナ設備などがあるため、設備更新費用は親局1局で20億円以上になると総務省は試算しています。これに対し、FM局は4000万円前後。実に50倍ほども違うのです。