相続のために生前にしておくべきことはいろいろある(写真:midoriimage/イメージマート)

 医学の進歩によって飛躍的に伸びた寿命。仕事ができなくなっても、歩けなくなっても、寿命が尽きるまで生きるためにはお金も必要だ。そこまでに何を備えておけばいいのか──。『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ新書)から考えて見よう。

※この記事は、『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ新書)より一部抜粋・編集したものです。

(岡信太郎:司法書士、司法書士のぞみ総合事務所代表)

国庫に吸収される遺産は600億円!

 長い年月をかけて築いてきた財産も、認知症や病気によって判断能力が低下すると自分の意思で資産の管理や処分ができなくなり、財産が宙に浮いた状態になってしまいます。

 相続人がいない人の遺産が国庫に納められることはご存じでしょう。昨今は単身世帯の増加などによって独り身の方が増加しており、その方に兄弟、姉妹のような相続人となる家族がいなければ相続人不存在となってしまいます。

 結婚していても子どもがいないなどの事情があれば、どちらかが先に亡くなった後に相続人不存在となるケースもあります。

 そのため、毎年600億円以上ものお金が生前本人のために使用されることなく、相続人に引き継がれることもなく、国庫へと消えていっているのです。

 準備をしないのが最大のリスクです。苦労して築いた財産は自分や希望する人・団体のために使えるように今から対策を打った方がいいと思います。

①資産管理は健康な体あってこそ。健康寿命を延ばそう

 健康寿命を延ばし、財産を守りましょう。認知症にならずとも、年老いていくと介護を受けることが増えていき、リハビリやデイサービス、デイケアに割く時間も多くなっていきます。

 そうなれば生活の中心に健康問題が居座り、資産管理に回す余力がなくなってしまいます。財産どころではなくなってしまうのです。

 そこに認知症の発症が加わると、さらに財産の管理能力や契約能力は低下していきます。場合によっては完全に喪失してしまう恐れもあります。そうなると一層、自分の財産なのに手をつけられなくなる恐れが高まってしまいます。

 一方、健康であればどうでしょう。これまでと同様、自分の判断によって財産にまつわるすべてのことを決めることができます。本人確認と意思確認さえできれば、90歳になろうが100歳になろうが契約等の法律行為も問題なく行えます。遺言を作成して資産が分散しないように対策を打つこともできます。

 この後の項目で説明する「任意後見」や「信託契約」によって財産を守ることも可能です。 

 まず、体の健康のために今、何ができるかを考えてみましょう。食事、運動、睡眠といった生活習慣を見直し、問題があれば改善を図ってください。生活を改善したからといって絶対に病気にならないという保証はありませんが、やっておくに越したことはありません。

 認知症は、脳梗塞などの血管の病気をきっかけに発症することもあります。日々の食事で減塩を実践したり運動をしたりすることで発症の確率を下げておけば、判断能力をできるだけ長く維持する助けになるはずです。

 体力と気力は連動しており、どちらか一方が低下してしまうと、財産への関心が薄くなってしまう恐れがあります。そのような事態はできるだけ避けたいものです。健康第一を心がけましょう。