これからの長寿命時代には「計画的老い」が不可欠(写真:maroke/イメージマート)これからの長寿命時代には「計画的老い」が不可欠(写真:maroke/イメージマート)

 医学の進歩によって飛躍的に伸びた寿命。仕事ができなくなっても、歩けなくなっても、寿命が尽きるまで生きるためにはお金も必要だ。そこまでに何を備えておけばいいのか──。『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ新書)から考えて見よう。

※この記事は、『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(ポプラ新書)より一部抜粋・編集したものです。

(奥真也:医療未来学者、医師、医学博士)

 現代は医療技術が発達して、病気になったときの治療の選択肢が昭和の時代と比べて格段に増えました。

 日本は国民皆保険制度があるおかげで、国民全員が安い医療費で高度な医療を受けられるようになっています。患者さん自身が国内にある医療機関の中から自由に選んで受診できるフリーアクセスの制度もあります。

 しかし、これらの制度がいつまで続くかはわかりません。今のように誰もが自由に病院にかかり、治療を選べる状態は長く続かないかもしれないと私は考えています。なぜなら、国の医療費は年々増加しているからです。

 新型コロナの感染拡大に伴う受診控えがあり、2020年は対前年比で1兆円超の減少となりましたが、長期的視点で見れば増加傾向にあります。

 2022年の医療費は46兆円となり、過去最高を更新しています。医療の進歩によって新薬や新しい医療機器、医療技術が登場して診療報酬も増額されています。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年以降は、少子高齢化による人手不足と相まってますます医療費が膨らむでしょう。

 高額医療製品は増え、それを使う人が増えているのですから、医療費は増える一方になります。現在の公的医療制度を維持し続けることがかなり難しくなっているのは疑いようがありません。

 そうなると、次に起こるのが個人の医療費負担の増額です。保険適用される病気も少しずつ限定されていくかもしれません。治療しなければ患者さんが死に至る確率が極めて高い「致死的な病気」については国が面倒を見るが、そうでない病気については国は面倒を見ないという傾向が強まっていくのではないかと思われます。

「致死的な病気」として想定されるのは、たとえば心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、がん、結核などです。逆に「非致死的な病気」として考えられるのは花粉症、皮膚炎、虫歯、骨折、軽度の心不全や狭心症などです。保険適用から外される未来もないわけではありません。

 国は保険適用される病気が減らないよう努力を続けてはいますが、いつかは減らさなければ国家財政が立ち行かなくなるのではと思います。そのとき、非致死的な病気を治療するのは自己負担になります。

日本は国民皆保険制度の下、国民全員が安い医療費で高度な医療を受けられるようになっているが、いつまでこの状況が続くかはわからない(写真:ideyuu1244/イメージマート)日本は国民皆保険制度の下、国民全員が安い医療費で高度な医療を受けられるようになっているが、いつまでこの状況が続くかはわからない(写真:ideyuu1244/イメージマート)