『話が要領を得ないだけでなく、メモそのものも整理されていない、ということですね』
「そうです。たとえ先方がとりとめのないことばかりしゃべったとしても、こっちから突っ込んで聞き出せばいいじゃないですか。それでつかめた情報をメモすればいい。でも、メモを見ても支離滅裂で、何だかさっぱりわからないんです」
『頭の中が整理できていないんでしょうね』
「ほんとにそう思います」
『本人の頭の中が整理できていなければ、当然ながら相手の話を系統立てて聞くことができないし、相手の話の要点をつかむこともできない。それで、聞いた内容をうまく整理しながらメモすることもできないんでしょう』
「人の話を聞くっていうのも、結構能動的な行動なんですね」
『聞く側の頭の中が整理できていないと、相手の話の要点をつかめなかったり、大事な点を判断できなかったりします。たとえてみれば、聞く側の頭の中にいくつかの整理箱があれば、話を聞きながら、これはこっちの整理箱に入れる話、これはあっちの整理箱に入れる話、っていう具合に、整理しながら聞けるわけです』
「なるほど……書類の整理ができない事務職にも、取引先の要望を聞き取れない営業職にも、どちらにも通じることですね」
頭のなかを整理する訓練が有効
指示待ちで困る、言われたことしかやらないから困る、といった声もよく耳にするが、今回の問題は、指示通りに動くことさえできないので困っているということである。その背後にあるのは、頭の中が整理できていないということ。そのために、書類を見て分類したり、人の話を聞いて要点を整理したりすることができない。
そこで大事なのは、頭の中を整理する訓練をすることである。ゆえに、以下のような具体的な訓練法についてのアドバイスを行った。
目の前の業務をこなすことに追われ、実務が滞ってしまうからといって訓練を怠っていると、ミスも多く、効率も悪い働き方がずっと続いてしまうことになる。後々戦力になってもらうことを考えると、急がば回れで、教育訓練の時間を取ることも必要だろう。
頭の中を整理するには、物事を理屈で整理する訓練が有効である。数列(数字がいくつも並んでいるもの)を見て法則性を見抜いたり、絵合わせみたいなバラバラな図を見て組み合わせを考えたりするゲームがあるが、そういった法則性を見抜く訓練も、システム思考を身につけるのに役立つ。