低賃金、やりがい搾取で働く人を追い詰めるブラックな職場。その一方で、ムダで無意味なうえに有害、なのにしっかり給料がもらえる「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」が存在する。今やホワイトカラーの半分以上が「クソどうでもいい仕事」ではないかという疑惑さえあるが、日本にはどのようなブルシット・ジョブがあるのか。現場からの告発をリポートする。(若月 澪子:フリーライター)
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コロナを機に、多くの企業が採用したリモートワーク(テレワーク)。今、リモートワークを継続している企業は、ピーク時の半分以下の15%程度にまで減少していると言われる。
コロナが終了してもリモートワークを続けられているのは、資金面にゆとりがある大企業や、情報通信業・学術研究、専門技術サービス業などで、そのほとんどが首都圏の在住だ。
【関連リンク】
◎日本生産性本部「第13回 働く人の意識調査」(日本生産性本部)
◎「テレワーク人口実態調査」(国土交通省)
◎「テレワークに関する調査」(パーソル研究所)
「意識高い系」の企業や職種が実施するイメージがあるリモートワークだが、それがネガティブな役割を果たす場合もある。リモートワークを体のいい「追い出し部屋」として、リストラ候補を待機させているケースがあるのだ。
「三顧の礼」で迎えられたエリート社員
「今、会社に僕の席はありません。出社しなくていいよと言われて、コロナ以降はずっと在宅勤務。でも大した仕事はやってません。窓際族のようなものです」
こう話すのは、とある中小の保険会社に勤めている首都圏在住のDさん(45)。ボサボサ頭にバンダナ、丸メガネ、トレーナー姿のDさんは、金融関係のサラリーマンには見えない。「職業不詳」と言ってもいいようないで立ちである。
もともと都内の有名大学を卒業し、大手損害保険会社に就職したDさん。当時は金融庁との折衝をやる部署にいたというからエリート社員だったのだろう。
30代で外資系の保険会社に転職、そこでもコンプライアンス部門を担当するなどバリバリやっていたという。ところが、不祥事を起こして職場を追われたのが7年前。
それでもキラキラしたキャリアを持つDさんは、現在の保険会社に「三顧の礼」で迎えられた。
「役員待遇で転職し、ここでもバリバリやっていくぞという感じでした」