- 3月10日に始まるイスラム教のラマダン(断食月)を前に、中東情勢が一段と緊迫してきた。
- イスラエルがガザ南部のラファへの地上侵攻を示唆。パレスチナ側の犠牲者が激増すればアラブ民衆の怒りが爆発し、地域の原油輸出に支障をきたす恐れがある。
- 万が一「石油危機」のような状況が起きた場合、日本の備えは万全だろうか? 潤沢な石油備蓄の放出という「伝家の宝刀」は、実はすぐには抜けない状況にある。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
2月20日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前営業日の16日に比べ1.01ドル(1.3%)安の1バレル=78.18ドルで取引を終了した。中東地域の地政学リスクの高まりを背景に一時、79.90ドルと昨年11月上旬以来の高値を付けたが、その後、利益確定売りに押され、3営業日ぶりの下落となった。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
イラク石油省は14日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスで合意した目標を超過して生産している件について、今後4カ月で対処する意向を示した。
OPECプラスは昨年11月、今年第1四半期に日量約90万バレルの追加の自主減産に合意した。だが、イラクの1月の原油生産量は日量約419万バレルで昨年12月から約10万バレル減少したものの、目標の生産量を約20万バレル上回っていた。
次にロシアだが、足元の石油精製量が今年1月に比べて日量38万バレル(4%)減少している*1。ウクライナ軍の度重なるドローン攻撃がロシアの石油生産活動にダメージを与えているからだ。世界の燃料市場は逼迫感を強めており、燃料価格の上昇が原油価格を押し上げる可能性が高まっている。
*1:Ukrainian Drone Attacks Drag Russia’s Refining Rates Down by 380,000 Bpd(2月19日付、OILPRICE)