米軍に暗殺されたイラクの親イラン武装組織「カタイブ・ヒズボラ」の司令官を悼む人々(写真:ロイター/アフロ)
  • 原油価格の上昇が続いている。背景にあるのは、中東地域の地政学リスクの高まりだ。
  • フーシ派は紅海を航行する商船に対する攻撃の手を緩めず、米英軍も報復を続けている。
  • 「次の火種」として懸念されているのがイラク。米軍による親イラン武装組織「カタイブ・ヒズボラ」司令官暗殺で反米ムードが急速に高まっている。(JBpress)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 2月13日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.95ドル(1.2%)高の1バレル=77.87ドルで取引を終了した。原油価格が上昇したのは7営業日連続だ。

 中東地域の地政学リスクの高まりへの警戒が主な要因だ。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどで構成するOPECプラスは今年1月から日量約90万バレルの追加の自主減産を実施しているが、履行状況にばらつきがあることが明らかになっている。OPECが13日に発表した報告書によれば、減産を約束したクウェートとアルジェリアは速やかに実施したが、イラクの減産は合意の約3分の1(日量9.8万バレル)にとどまっている。OPEC加盟12カ国の1月の原油生産量は日量35万バレル減少したが、減少幅の約半分は自主減産合意から除外されているリビアで発生したパイプライン供給障害に起因するものだった。

 次にロシアだが、「米国の制裁強化により多数の原油タンカーが運航を停止している」との観測が出ている*1

*1ロシア原油のタンカー多数が運航停止、米制裁強化が効果示す( 2月14日付、ブルームバーグ)

 OPECプラスは第2四半期以降の減産延長の是非について3月上旬に判断するとしているが、どのような合意が得られるかは依然として不透明な状況だ。

 世界最大の産油国である米国の生産量は堅調に推移する可能性が高い。

 米エネルギー情報局(EIA)が12日に公表した月報によれば、3月の主要シェール層の原油生産量は日量970万バレルと昨年12月以来の高水準になる見通しだ。米国の石油業界では大型再編が進んでおり、これまでと異なり、価格の変動に左右されにくい生産体制が確立されつつある。