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  • 原油市場の「資源配分」機能が危機にさらされている。OPECプラスは減産に取り組んでいるものの、それ以外の産油国が増産しており市場支配力が低下している。
  • ロシアの石油関連施設にはウクライナのドローンが攻撃を仕掛けており、供給懸念がくすぶる。イランが米英と直接的に軍事衝突すれば、原油市場は混乱に陥る可能性が高い。
  • こうした産油国の「分断」で、原油という世界経済にとって最重要の資源を配分するという機能を市場が果たせなくなる可能性が高まっている。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 2月5日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前週末比0.5ドル(0.7%)高の1バレル=72.78ドルと4営業日ぶりに反発した。中東情勢が緊迫しているのにもかかわらず、原油価格は一進一退でほぼ横ばいの状況が続いている。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。

 ロイターによれば、石油輸出国機構(OPEC)の1月の原油生産量は前月比41万バレル減の日量2633万バレルと半年ぶりの大幅な減少となった。政情不安によりリビアの原油生産量が落ち込んだことが主な要因だ。

 OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは2月1日に合同閣僚監視委員会を開催し、今年第1四半期の減産計画を維持することを確認した。OPECプラスは今四半期、日量約90万バレルの追加減産を実施している。

 OPECプラスは第2四半期以降の減産延長の是非について3月上旬に判断するとしている*1。サウジアラビアとロシアは減産延長に前向きな姿勢を示しているが、OPECプラス全体で合意が得られるかどうかはわからない。

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 OPECプラスを主導するサウジアラビアの国営石油企業サウジアラムコは1月30日、「原油生産能力を日量1200万バレルから1300万バレルに引き上げる計画をやめるよう、エネルギー省から指示を受けた」ことを明らかにした。サウジアラビアはこのところ現在の生産能力を日量300万バレル下回る水準で生産しており、2027年までに生産能力を拡大する必要はなくなったからだとみられている。

 ロシアではウクライナ軍による石油施設に対するドローン攻撃が相次いでいる。2月3日も南西部ボルゴグラード州の製油所が攻撃された(操業に問題は発生していない模様)。

 だが、OPECプラスを主導する両国の生産減の情報に対して、市場の反応は乏しかった。昨年後半まで市場の注目を集めていたOPECプラスだったが、最近、その存在感が急速に薄れている。OPECプラス以外の産油国、特に米国の生産量が伸びていることが影響している。