- 2月26日、仏マクロン大統領がウクライナへの地上部隊派遣の可能性を示唆したことで、原油価格が一時上昇した。
- だが、このところ原油市場に大きな動きはなく、地政学リスクの高まりに鈍感になっているとの指摘もある。
- 中東でフーシ派の活動が激しさを増すなど、原油の安定供給に対する懸念は確実に高まっている。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
2月27日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比1.29ドル(1.7%)高の1バレル=78.87ドルで取引を終了した。「中東地域の地政学リスク」と「原油需要に対する懸念」という材料が綱引きをしており、原油価格はこのところ、76ドルから79ドルの間を上下している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは日量約90万バレルの追加の自主減産を実施しており、4月以降もこの措置を続けるかどうかを3月上旬に決定すると言われている。
非OPECプラスの原油生産が伸びていることから、市場では「原油価格を下支えするため、OPECプラスは第2四半期もこれを継続する」との見方が広まっている*1。だが、筆者は「今回も難しい決定になるのではないか」と考えている。
*1:OPECプラス、原油減産を4-6月まで延長へ-市場関係者らが予測(2月24日付、ブルームバーグ)
昨年末に追加減産を決定した際、これに反発したアンゴラはOPECから脱退した。今回もサウジアラビアが主導することになるだろうが、原油価格が思惑通りに上昇しない状況下で加盟各国が減産の延長をすんなりと同意するとは思えないからだ。
OPECプラスにとって幸いだったのは、ロシアが3月から半年間、ガソリンの輸出禁止を決定したことだ。
その理由の1つとして「製油所の修理」を挙げているが、ロシア西部の製油所に対するウクライナのドローン攻撃が影響していると考えられる。
OPECプラスの「目の上のたんこぶ」となった米国の原油生産量は日量1330万バレル、原油輸出量は約500万バレルとそれぞれ過去最高の水準だ。だが、シェールオイルの掘削コストが上昇しており、今年は昨年のような大幅な増産はないだろう。
一方、需要面では中国への懸念が後退している。