3月10日ごろからイスラム教徒のラマダン(断食月)が始まる。イスラエルとイスラム組織ハマスはラマダン期間中の停戦に向けた交渉をしているが先行きは不透明だ。
ラマダン期間中はイスラム教徒の連帯が強まりテロのリスクが増すとされる。停戦が実現せずイスラム教徒の不満が高まれば、テロが「暴発」してしまう懸念がある。
足下の原油価格はOPECプラスによる減産延長合意の効果が期待薄で70ドル台後半で推移している。ただ、ラマダン中に中東からの原油供給を揺るがす事態が起きれば急騰する可能性は否定できない。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
3月5日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.59ドル(0.7%安)の1バレル=78.15ドルで取引を終了した。前週末の1日、原油価格は一時、4カ月ぶりに1ドル=80ドルを突破したが、今週に入り、再び70ドル台後半の水準に低下している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは3月3日「一部の国による自主減産(日量約220万バレル)を6月末まで延長することで合意した」と発表した。
サウジアラビアは日量100万バレルの減産を継続する。
ロシアは生産・輸出量を日量47.1万バレル減少させる。「現在の輸出削減から実効性の高い生産削減に軸足を移す」としているが、ウクライナによる石油関連施設への攻撃が影響している可能性がある。
残りはイラクが日量22万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)が16.3万バレル、クウェートが13.5万バレル、カザフスタンが8.2万バレル、アルジェリアが5.1万バレル、オマーンが4.2万バレルの減産を維持する。
OPECプラスは今回の合意により「第2四半期の世界の原油市場は引き締まる」と見ているようだ。国際エネルギー機関(IEA)は「今年第2四半期の世界の原油供給量は日量1億380万バレルと需要量を100万バレル上回る」と予測している。OPECプラスが自主減産を4月以降も続ければ、供給過剰から供給不足に転じる構図となる。
だが、自主減産は協調減産とは異なり強制力がない。