本物の作家というものは、まことにすさまじいものだ。とても常人のなせることとは思えない。司馬遼太郎は1996年2月12日、72歳で亡くなった。前年3月から11月まで三浦半島を巡った。

『街道をゆく』は全43巻、丸々24年間に及ぶ畢生のライフワークだったのである。たしかに歴史エッセイであり、作家に対しては無礼な言い方になるかもしれないが、わたしは『街道をゆく』は、司馬遼太郎の代表作だと考えている。

 ついでにいえば、わたしは五木寛之の『百寺巡礼』(全10巻、講談社文庫)に対しても、おなじような意識をもっている。

リクライニングチェアで本を読んでいる姿が

 ということで1月下旬の某日、やっと記念館を訪ねたのである。

 駅の改札口を出ると、左方にスーパーの「ライフ」がある。その横の道を歩いていくと、はす向かいの大阪府立布施高校の金網に大きな「司馬遼太郎記念館」の横断幕がかかっていた。町を上げての歓迎ムードが感じられる。

 しばらく歩くと「八戸の里南」の交差点があるのでそこを右折する。

 右手前方にこんもりした木立が見え始めたら、もう1、2分で司馬遼太郎記念館に着く。門を入ると鬱蒼とした立ち木の先に平屋建ての自宅が現れる。