(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 見るのを楽しみにしていた『ヘルドッグス』(原田眞人監督、深町秋生原作、岡田准一主演)の新作DVDが出たので、ひさしぶりに、TSUTAYAで新作ばかり5作を借りてみた。全部で1100円だ。

 ちなみにあとの4作は、『銀河鉄道の父』(成島出監督、門井慶喜原作、役所広司、菅田将暉)、『大名倒産』(前田哲監督、浅田次郎原作、神木隆之介、杉咲花)、『TOKYO MER 走る緊急救命室』(松木彩監督、鈴木亮平)である。

 あと1本足りない。なににするか?

『BLUE GIANT』(立川譲監督)が目に入ってきた。石塚真一原作の漫画の劇場アニメ版だ。

 この原作漫画は好きで、現在までタイトルは「BLUE GIANT」「BLUE GIANT SUPREME」「BLUE GIANT EXPLORER」と変遷しているが、既刊分全29冊、すべて読んでいる。

 だがわたしは、漫画は好きだが、テレビにしろ映画にしろ、アニメがあまり好きではないのである。これが映画化されていることは知っていたが、見る気はなかった。

 しかしこれでいいか、と、借りた。これでめでたく5本。

 ところが意外や意外、5本のなかで一番期待していなかったこの『BLUE GIANT』が、一番おもしろかったのである。

 本命だった『ヘルドッグス』は筋のわかりづらい、古臭いアクションものだった。岡田の格闘技も不発。『ファブル』のほうがよほどよかった。

『銀河鉄道の父』は、愚鈍な賢治をもった親父さんは大変だったなと思い、『TOKYO MER 走る緊急救命室』は、わざとらしい奇跡に歓呼するアメリカ映画かと思った。『大名倒産』だけが斬新な発想で、まずまずおもしろかった。

『BLUE GIANT』はまったく期待していなかったことが、かえってよかったのかもしれない。それだけ予想外で、映像と音楽の迫力に圧倒されて感動した。

シンプルな青春物語、そこがいい

 ストーリーはシンプルである。そこがいい。しかしありきたりとはいえ、それなりにドラマチックに仕上がっている。