テナーサックスで「世界一のジャズプレーヤーになる」との大志を抱く18歳の宮本大(声:山田裕貴)が、仙台から上京してくる。
そこで同い年の傑出したピアニストの沢辺雪祈(声:間宮祥太朗)と運命的に知り合う。それに同郷の友人の大学生・玉田俊二(声:岡山天音)のドラムを加えて、18歳トリオ「Jass」を結成する。
未熟ながら結成3か月で、早くも小さなジャズクラブでライブをやる。客は店長を入れてたった4人。
雪祈は自嘲するが、大はそれを遮るように、いう。「なあ雪祈。俺たちカッケえな。なあ玉田、俺たち今からジャズをやるんだべ。俺たち死ぬほどカッケえな」。うれしくてしようがないのだ。「このステージを一生覚えておこう」
大のこの熱量に魅かれて、雪折がいう「ジャズは今瀕死、死の淵をさまよっている」時代にあって、多くの読者がこの漫画についたのであろう。
かれらのオリジナル曲「FIRST NOTE」が始まる。3分40秒。なんといってもこの映画でいいのは演奏シーンだ。音がうねるのである。
その後、この3人が、対立や葛藤を繰り返しながら、地域のジャズフェス出演などを経て、互いに信頼を築き、やがて東京一のジャズクラブ「So Blue」の舞台を目指す。まさに青春物語だ。
斬新な映像と音楽が圧巻
いまどきここまでジャズに打ち込んでいる若者がいるだろうか? いるにちがいない。若者を舐めるべきではない。後生畏るべし、だ。
「カツシカ・ジャズフェスティバル」での演奏曲は「N.E.W」である。3分17秒だ。光と色彩。演奏者の動き、客席の様子、観客の表情が見事だ。
すべての音楽場面で、モーションキャプチャーを使った楽器の指の動きと音のシンクロがよくできている。ちなみにそれぞれの実際の演奏者は、ピアノが上原ひろみ、サックスが馬場智章、ドラムは石若駿である。
ラストは当然「So Blue」での演奏である。
最後のひとつ前の曲「WE WILL」は5分11秒。ここではじめて玉田のドラムソロがある。締めくくりは再び「FIRST NOTE」だ。斬新な映像と音楽の、圧巻のめくるめく7分39秒だ。ため息がでそうなほど、映像と音を堪能できる。
アンコールで思いがけない感動のシーンがある。