保山耕一氏のYouTube映像「奈良、時の雫」シリーズ「カザグルマ(大宇陀)」(2023/5/11)から

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 保山耕一(ほざんこういち)氏は奈良県生駒市在住の、日本ではトップクラスの映像カメラマンである。かれの作品上映会の存続が、いま危ぶまれている。まだ決定したわけではないが、奈良県の意向により、ほぼ打ち切りになるらしいというのである。

 保山氏については、本欄でこれまでに2回ほど触れた。
静謐で美しい…保山耕一「奈良、時の雫」
「奈良を撮り続ける」絶望と希望のあいだで揺らぐ保山耕一氏の悲痛な覚悟

 かれは長年にわたり、YouTubeに「奈良、時の雫」というシリーズの映像(現在1300作品以上)を上げつづける傍ら、毎月第2日曜日に奈良公園バスターミナルのレクチャーホールで作品上映会を開催してきた。

 直腸ガンによる排便障害に日々苦しみ、テレビ局の仕事も2022年3月に終わって無職となった保山氏にとって、毎月の上映会は最後の生きがいである。それが中止に追い込まれようとしている。

「まったく報われないのに誹謗される」

「奈良、時の雫」シリーズに2023年5月12日にアップされた作品は「カザグルマ(大宇陀)」という映像だった。そこに付された保山氏の文章には、「奈良公園バスターミナルでの情報発信」が県の事業停止リストに含まれているらしい、と書かれていた。

 その後、この文章は削除されているから、この文章からの直接の引用はやめるが、保山氏の大意はこういうことである。

 事業停止リストに含まれていることから誹謗中傷のメールが届いている。しかし自分の上映会は県から補助金ももらっていないし税金も一切使ってない。

 スタッフたちは入場料収入(大人3000円)から報酬を受け取っているが、保山氏本人は一度も受け取っていない。それどころか諸経費はすべて自分の自腹である。ちなみに「奈良、時の雫」のYouTubeも、まったく収益化していない。

 元々バスターミナルで上映会が始まったのは、ホールの有効利用をするために奈良県から協力要請をされたことがはじまりである。奈良県のために自分が役に立てればという思いだけでやってきた。しかも現在では、観客の半数は県外からの客で、奈良県の宿泊にもつながっている。

 しかしそのことがまったく報われない。それどころか、税金の無駄遣いだと誹謗され、まるで不要ゴミのように扱われている。

 いったいなぜ、上映会は事業中止リストに入ることになったのか。