裏金の使途は依然として未解明

 派閥のトップを総裁候補として応援する見返りに、選挙の際は派閥から最大限の支援を引き出す――。派閥には、そうした相互関係を維持するだけでなく、政策立案の勉強会や経験の浅い議員がさまざまな経験を積む、一種の教育機能を持っているとも言われてきました。

 しかし、派閥の弊害もかねて指摘されてきたことであり、派閥解消も過去、何度か党内で提唱されています。とくに政治とカネが大きな問題となったリクルート事件(1989年)の際には、失われた国民の信頼を取り戻そうと、自民党は政治改革大綱を策定。その中では「派閥の弊害除去と解消への決意」を国民に向かってうたい上げました。その宣言は実現しないまま、今日に至ったのです。

 政治資金パーティーの裏金問題によって、戦後の自民党政治を形づくってきた派閥は相次いで解散を余儀なくされています。存続を表明しているのは麻生派、茂木派だけ。その両派に対しても国民は厳しい視線を注いでおり、茂木派内部からは「解散やむなし」の声も出ています。

 長期の経済停滞や国際環境の変化などに伴い、政策のフリーハンドの範囲は狭くなってきました。各派の政策にも以前ほど差はありません。派閥ごとにカネを集めて傘下の議員をまとめ上げる手法は、時代にそぐわない印象もあります。そして、派閥を解散すると言っても額面通り受け取っていいものかどうか。すでに「政策集団としての存続」を打ち出している派閥もあります。裏金が何に使われていたのかも解明されていません。まだしばらく、国民の注視が必要なようです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。

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