注目されるのが得意ではなかった
『Link』によると、小平は一人っ子の印象が強いが、3姉妹の末っ子である。3歳のときにはじめてスケート靴を履き、保育園ではじめて100mを走ったが「断トツの1位」だったという。
「小さい頃は人見知りで、恥ずかしがり屋で、泣き虫。人前に出るのがあまり得意ではなく、両親や姉たちの後ろに隠れていることが多かったです」
しかしその割には活発で、好奇心が強くなんでもやった。スケートのほかに、水泳、ピアノ、テニス、サッカー、一輪車、縄跳びなどに夢中になった。体育系以外にも、本を読むのは好きで、音楽ではコルネットを吹いた。おとなしかったが、芯が強く、負けず嫌いだった。「私の放課後は、いつも楽しい事でいっぱい」と作文に書いた。
小平も高木も中学生で全日本ジュニア選手権のチャンピオンになっているが、小平は高木ほどマスコミで騒がれなかった気がする(わたしが知らないだけかもしれない)。
高1のとき、インターハイの500mで2位になったが、表彰台に上がった小平はぎこちなかった。「緊張していたのか、笑顔を作ることができなかったみたいです。表彰台は大勢の人に注目されるので、あまり得意ではなく、どうやって喜んでいいかわかりませんでした」と書いている。
中学で優勝しても、インターハイで2位になっても、喜び方がわからない。信州大学2年のときには、全日本距離別選手権の1000mで優勝した。しかしそのときも2位の吉井小百合に、「会場の人に手を振るんだよ」と腕を持ちあげられる始末だった。
意志も、闘志も、感動も内向する
しかし、これが小平奈緒である。
小平のよさは、この内向する精神にあるように思われる。黒田博樹の座右の銘「雪に耐えて梅花麗し」に似たような意味である。「人見知りで、恥ずかしがり屋」だから、両手を突き上げ、叫び声をあげ、全身で喜びを表現するような行為はできないのだ。したくもないだろう。