カタール・サッカーW杯で日本が決勝トーナメント進出し、歓喜に沸くファン(写真:つのだよしお/アフロ)カタール・サッカーW杯で日本が決勝トーナメントに進出し、歓喜に沸くファン(写真:つのだよしお/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 ここ1年ほど、日本のスポーツ選手の躍進ぶりが目覚ましい。

 2022年暮れのカタール・サッカーW杯での日本代表の快進撃が最初の発火点だった。

 去年のサッカーW杯では、だれもが想像しなかったのだが、ドイツを2-1、スペインも2-1で破り、まさかのグループ予選をトップ通過したのである。決勝トーナメント初戦でクロアチアにPKで敗れるも、日本の評価を一新させるには十分すぎるほどだった。

 つづいて、今年3月のWBC(ワールドベースボールクラシック)で、日本代表は、大谷翔平の獅子奮迅の活躍でアメリカ相手に決勝を戦い、劇的な優勝をした。

 なんといっても日本は野球である。それまでもメジャーリーグの大谷の人気は知られていたが、この大会でかれの人気は全国民的に爆発した。

 9月にはサッカーのヨーロッパ遠征親善試合で、ドイツをまたもや4-1で鎧袖一触、トルコも4-2で退け、センセーションを巻き起こした。

 サッカーに限らず、日本選手の宿痾のようにいわれた欧米人に対する気おくれやコンプレックスは、いまやほぼ解消されたかのようである(もっとも、大谷がアメリカとの決勝戦前に、「相手を尊敬するのはやめよう。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」とチームメイトにいったように、完全払拭にはまだ遠いかもしれないが)。

 昔、サッカーの国際試合で、ピッチに出る前の両チームの選手が並ぶたまり場で、中田英寿だけが相手チームの外国選手と親しく話していたことを思い出すと、まさに隔世の感がある。サッカー選手には、気おくれはまるでない。

選手たち個々の力が圧倒的に高まった

 スポーツ人気のきわめつきは、9月に行われた男子バスケットW杯だった。

 フィンランド相手に98-88で18点差を大逆転し、ヨーロッパのチームから歴史的初勝利を挙げた。さらに最終カーボベルデ戦も80-71で勝利し、自力で来年のパリオリンピック出場を決定したのだった。河村勇輝や富永啓生といった選手が大ブレイクした。

 もちろんこれらのスポーツ人気は、放映権を獲得して浮かれてしまったテレビ局の大々的な報道によって煽られた部分がある。しかしそれ以上に重要なことは、選手たち個々の力が競技種目を超えた相乗的な効果により、圧倒的に高まったことにあると思われる。それがファンの心をつかんだのである。