わたしもスポーツの国際大会ファンとしては、じつに気分のいい1年間を過ごさせてもらった。
なにより、ファンあってのスポーツである。スポーツを見ていれば、贔屓の選手や贔屓のチームができてくるのは自然であり、世界でもおなじである。わたしに格別贔屓にする選手やチームはないが、しかし国際大会では日本を応援する。
これはスポーツ好きにはあたりまえのことである。なんの不思議もない。
「スポーツ選手たちはすごいけど」
ファンのなかには、家族全員で贔屓チームのユニフォームを着るような熱狂的なファンが存在する。わたしはそこまではしないが、気持ちは多少理解できる。しかしなかには、自分の存在意義や人生の生きがいにまでなっているようなファンがいる。それもまた、ちょっと極端というだけで、いて不思議ではない。
けれど、このようなファン心理に素朴な疑問をつきつけた人がいる。そんなファン心理は全然あたりまえではない、というのである。
「あのちゃん」である。それだれ? という人もいるだろうけど、とりあえず、彼女がなんといったかを聞いてもらおう。
日本テレビの「上田と女が吠える夜」という番組で、世間の盛り上がりに対する違和感を聞かれると、「あのちゃん」はWBCの盛り上がりについて、「スポーツ選手たちはすごいけど、(応援する人は)何もしてないのに、何であんなにほこらしげに喜べるのかな」といったというのである(古市憲寿もいいそうだ)。
これを読んでわたしはハタと膝を打ったのである。わたしは、彼女の心理もわかるのである。
スポーツ中継を見ていて、不快になるのは、外国人のファンに多いのだが、贔屓のチームが勝つと、まるで自分の手柄であるかのように、歯をむき出し、吠え、絶叫するアホが多いことである。わたしは「おまえはなにもしてないよ」と思う。
かれらはただのファンにすぎないのに、ファンであることで自分には相応の価値があるとか、自分はひとかどの人間だ、と思い込んでいるようなのだが、そんなことにはなんの価値もないのである。贔屓のチームの勝利を喜ぶのは当然だが、自分の手柄のようにアピールすることは、ほんとうはおかしいことなのだ。