オセロの神がいたとしたら、すべての手を読み通せるだろうか?(画像はイメージ)

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 2023年10月30日、インターネット上の論文サイトに『オセロは解けた(Othello is Solved)』という刺激的なタイトルの論文が掲載されました(※1)。著者はPreferred Networks社の滝沢拓己博士です。論文によると、ついにオセロゲームの棋譜(ゲーム進行)がスーパーコンピューターの腕力によって解明されたといいます。コンピューター科学業界に衝撃が走りました。

 いったい「ゲームが解ける」とはどういうことで、何がどうなったらゲームは解けるのでしょうか。もう人間はオセロでコンピューターに勝てないのでしょうか(それはそう)。オセロこれからどうなっちゃうの?

 公開されている情報などをもとに解説しましょう。

まあ神の棋譜見て

 もしも神のごとき先読み能力を有するプレイヤーどうしがオセロを対戦するとどうなるでしょうか。二人(神なら「二柱」)は、初っ端から終盤までのゲーム進行を全部先読みし、あらゆるターンで最善の手を差し合うでしょう。

 そうした神の棋譜が次の図だといいます。

今回の発表によれば、神どうしが対戦し、ともに最善の手のみを打つ場合、このような棋譜となる。番号はそのマスが打たれた順番を示し、コマの色分けはゲーム終了時のもの。(Figure by Hiroki Takizawa, under CC BY 4.0)

 この棋譜は、白黒同数の引き分けです。オセロは神プレイヤーどうしが対戦した場合には引き分けになるゲームだと判明したのです。

 もしもどちらかのプレイヤーがこの棋譜から外れた手を打ったならば、相手は必ず、勝つか引き分けに持ち込めます。この棋譜から外れた手を打つことによって有利になることはできません。