授業が退屈に感じるのは、先生のせいなのか、それとも生徒のせいなのか。(画像はイメージ)

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 先日2023年9月15日(日本時間)、イグノーベル賞が発表されました。今年も石をなめる地質学者から、死んだクモを操る術など、10本の研究成果が並びました。日本人研究者も安定の連続受賞です。

「人々を笑わせ、それから考えさせる業績」に対して授与されるイグノーベル賞は、1991年、雑誌編集者で会社経営者(当時)のマーク・エイブラハムズ氏(1956-)によって創設されました。「イグノーベル(Ig Nobel)」は「下品な」とか「不名誉な」を意味する「ignoble」と「ノーベル(Nobel)賞」をかけた駄洒落で、つまり「下品なノーベル賞」あるいは「不名誉なノーベル賞」を意味します。

 本記事では日本人受賞者に限らず、10件の受賞研究全てを、原論文にあたって紹介いたします。

試すなら自己責任で

イグノーベル化学・地質学賞
受賞者:Jan Zalasiewicz(ポーランド、UK)
受賞理由:多数の研究者が石をなめるのを好む理由を説明

 受賞したのは論文ではなく、『古生物学協会』のニューズレターに掲載された『化石を食べる(※1)』というエッセイです。初っぱなから道端の石を拾ってなめてます。「石をなめることは、数限りなく試され使われてきたテクニックで、地質学者と古生物学者はみなこれに頼ってこの分野で生き延びてきた」とのことです。本当でしょうか。

 しかし地質学分野にはうとい筆者が心配することではないかもしれませんが、ヒ素鉱物とかなめて大丈夫なんでしょうか。自己責任でお試しください。

※1:Jan Zalasiewicz, “Eating Fossils,” The Paleontological Association Newsletter, no. 96, November 2017.

見たことあるはずなのに

イグノーベル文学賞
受賞者:Chris Moulin, Nicole Bell, Merita Turunen, Arina Baharin, Akira O’Connor(仏、英、マレーシア、フィンランド)
受賞理由:ある単語を何度も何度も何度も何度も何度も繰り返して発音するときの感覚の研究

「ジャメヴュ」とは、知っているはずのものごとや言葉が、見知らぬもののように思える現象です。同じ言葉を何度も繰り返して発音したり筆記したりすると、そういう感覚に陥ることがあります。誰もが経験したことがある現象と思われますが、研究例は意外に少ないようです。

 この研究(※2)は、被験者に単語を繰り返し筆記させて、ジャメヴュが生じるかどうか調べたものです。94人の心理学科の学生が集められ、2分間に単語を何回書けるかの調査だと説明されて、14の単語を繰り返し書かされました。30回も繰り返し書かされると、3分の2の学生は、ジャメヴュの状態に陥ったということです。

 そうすると、小学校でやらされる「書き方」は、30回以内にとどめた方が効果がありそうです。

※2:論文のタイトルがひねってあります。無理に訳すと『研究室研究室研究室研究室研究室研究室環境におけるジャメヴュの誘導:言葉の疎外と意味の飽和』という感じでしょうか。
Chris J. A. Moulin, Nicole Bell, Merita Turunen, Arina Baharin, Akira R. O’Connor, “The The The The Induction of Jamais Vu in the Laboratory: Word Alienation and Semantic Satiation,” Memory, vol. 29, no. 7, 2021, pp. 933-942.