鼻の中は左右対称か?

イグノーベル医学賞
受賞者:Christine Pham, Bobak Hedayati, Kiana Hashemi, Ella Csuka, Tiana Mamaghani, Margit Juhasz, Jamie Wikenheiser, and Natasha Mesinkovska(米国、カナダ、マケドニア、イラン、ベトナム)
受賞理由:死体の左右の鼻孔に同じ本数の鼻毛があるかどうか調べた

 脱毛症によって鼻毛を失うことがあり、そうなると患者は呼吸器の疾患やアレルギーにもかかりやすくなります。しかし鼻毛の脱毛の定量的な調査や、鼻毛を失うことの影響は、これまできちんと調べられたことがありません。

 この研究は、死体の鼻毛を調べてその密度などを測定したもの(※6)、のようです。

※6:Christine Pham, Bobak Hedayati, Kiana Hashemi, Ella Csuka, Margit Juhasz, Natasha Atanaskova Mesinkovska, “The Quantification and Measurement of Nasal Hairs in a Cadaveric Population,” Journal of The American Academy of Dermatology, vol. 83, no. 6, 2020, pp. AB202-AB202.

祝・日本人連続受賞

イグノーベル栄養学賞
受賞者:宮下芳明、中村裕美(日本)
受賞理由:箸やストローに電流を流して食べ物の味を変える実験

 安定の日本人受賞です。これで17年連続してイグノーベル賞受賞です。日本人はイグノーベル賞が大好きですが、イグノーベル賞も日本人が好きなようです。

 この研究については、日本の多くのメディアが取り上げていますので、そちらに解説を譲ります。

※7:Hiromi Nakamura, Homei Miyashita, “Augmented Gustation Using Electricity,”
Proceedings of the 2nd Augmented Human International Conference, March 2011, article 34.

日本語プレスリリース
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00003fh8kv.html

退屈の原因・・・それは せんせい?

イグノーベル教育学賞
受賞者:Katy Tam, Cyanea Poon, Victoria Hui, Wijnand van Tilburg, Christy Wong, Vivian Kwong, Gigi Yuen, Christian Chan(中国、カナダ、英国、オランダ、アイルランド、米国、日本)
受賞理由:教師と生徒の退屈の体系的研究

 授業において、教師が退屈を示したら、生徒も退屈するということは、誰でも知ってる当たり前のことだと思うかもしれませんが、実際にそれを実験してみたら、ちょっと意外な結果になりました。

 この実験は、437人の生徒と17人の教師に協力してもらって、2週間日記をつけるという授業を行ない、教師の退屈度と生徒の退屈度を調べたというものです(※8)。すると、両者の間にさほど関係はなく、教師が退屈しても、生徒が退屈するとは限らないという、いささか予想外の結果が出ました。

 読者のみなさんはこれまで何万時間と授業を受けたエキスパート生徒だと思われますが、この実験結果はその経験に反する気がするのではないでしょうか。経験によれば、教師の退屈は直ちに教室に伝染します。

 この実験結果は、実は人間というものは他人が退屈しているかどうかを読み取る能力がさほど高くなく、生徒には教師の退屈が読み取れないことを意味するのかもしれません。私達の記憶にある、教師も生徒も退屈した教室の雰囲気は、実は自分の退屈した感覚の単なる反映だったのかもしれません。

※8:Katy Y.Y. Tam, Cyanea Y. S. Poon, Victoria K.Y. Hui, Christy Y. F. Wong, Vivian W.Y. Kwong, Gigi W.C. Yuen, Christian S. Chan, “Boredom Begets Boredom: An Experience Sampling Study on the Impact of Teacher Boredom on Student Boredom and Motivation,”
British Journal of Educational Psychology, vol. 90, no. S1, June 2020, pp. 124-137.