審判で登場する「心神喪失」と「心神耗弱」の違いとは
里中:事件を起こした対象者が逮捕・送検されてから、検察官に心神喪失と認定されて、不起訴、あるいは起訴猶予となったりすると、精神科病院で鑑定入院を受けます。これは2カ月が原則で、最長で3カ月となっています。この後に地方裁判所に移送され、医療観察法の処遇を受けるかどうかの審判を受けます。
この審議は、通常の裁判とは異なり、裁判官と精神保健審判員という特別な資格を持った精神科医との合議体で決定されます。ですから、通常の裁判と形式は似ていますが、一般の傍聴人は入れませんし、被害者の家族も傍聴はできますが、質問をすることはできません。
この審判で「罪に問えない」と判断されると、医療観察法の処遇が決定されます。
ここで「心神喪失」と「心神耗弱」という2つの概念が出てきます。心神喪失は善悪の判断ができない状態であり、心神耗弱は限定的に判断能力が欠けているという状態。心神耗弱の場合は減刑の対象にはなりますが、無罪とならずに、刑務所に入り、刑務所の中で治療を受けることになります。
つまり、触法精神障害者がすべて医療観察法の対象となるわけではありません。精神疾患があるとしても、判断能力があるとされて、一般の刑務所に入り、中で治療を受けるケースもあるということです。
──心神喪失と判断されて、起こした事件の罪は問えないとされた人が収容される医療観察法病棟では、どのような治療が行われているのでしょうか。
里中:自分の患っている病気について学ぶ「疾病教育」と呼ばれる時間があります。どのような病で、どういう薬や治療が効果的か、といったことを学んでいくようです。
そして「内省プログラム」という自分が起こした事件を振り返って見つめるプログラムがあります。自分がどういう事件を起こしたのか。その時に、自分はどういう状態だったのか。どのようにして同じようなことが起きる可能性を予防するか。こういったことを心理職の方と一緒に考えていく時間です。
スポーツをして体を動かす時間や、「作業療法」といって、模型を作ったり、絵を描いたりする時間もあるようです。対象者として医療観察法病棟にいた経験のある人にも取材をしましたが、その方は、一日中プログラムがあるわけではないので「何もやることがない時間が結構多いことが苦痛だった」とも言っていました。