「自爆攻撃して死んだ息子が奪ったイスラエルの人々のことを考えると辛い」
双方とも数え切れないほどの犠牲者の数を積み上げ、それでも和解はできないという。互いへの不信感、歴史的に続く確執、そこに宗教が絡むと、紛争の根っこは掘っても掘っても届かない遥かな昔の地層に眠っている。
その根っこが、兵士の、そして武器を持たない市民の命までをも奪っていく。
20年前、ガザ地区の一人の父親が語った。
「息子は生まれてからずっと紛争の中で育ってきた。友達も何人かは爆撃で死んでいった。息子は短い人生の中であまりにも多くの死を見てしまったんだ。だが、息子が命を奪った相手のことを考えると辛い。誰にも未来はあったはずなのだから」
彼の息子は19歳で自爆した。ごく普通の心の優しい学生だったという。








