イスラエルは、かつてこの地を追われ、行きついた各地では差別を受け、ホロコーストまで経験したユダヤ人によって建国された。ユダヤ人にとっての悲願の国だ。男女共に兵役の義務があり、国民の国を守るという意識は高い。驚いたことに小学生ともなれば遠足ではリーダーが銃を持つといったことが当たり前に行われていた。

 また、話を聞いた人々の中には「神に選ばれし民」という言葉を使う人も多かった。旧約聖書の時代の話だ。

私はこの壁に身体ごと入りたいと言った。ユダヤ教超正統派の男性信者私はこの壁に身体ごと入りたいと言った、ユダヤ教超正統派の男性信者(写真:橋本 昇)
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「満足な武器を持たない我々は自分の体を吹き飛ばす自爆攻撃しか手がないんだ」

 一方のパレスチナの人々はこの半世紀以上、イスラエルの一方的な占領に苦しんできた。特にハマスが第一党となりガザ地区を支配した2007年からは、ハマスを過激派テロ組織とするイスラエルによってガザ地区は完全に封鎖され、現在230万人といわれるガザ地区の住民は出入りをシャットアウトされた「世界最大の刑務所」といわれる中での暮らしを余儀なくされている。

 ハマスによる自爆テロが繰り返されていた2002年、ガザ地区に入った。

 案内役をしてくれた現地テレビカメラマンのアズミが言った。

「自爆攻撃がいけないことぐらい百も承知だ。だが、イスラエルは陸からは戦車で、空からは戦闘機でやって来て、武器を持たない女性や子供たちまで殺していく。満足に対抗できる武器も持たない我々は、自分の体を吹き飛ばすという手段でしか対抗できないんだ」