連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識
昨今、騒動となっている芸能事務所の元社長が、会見で涙ながらに次のように訴えていた。
「本当にご理解いただきたいこととしては、『そういうこと』があって今スターになっているわけではなく、1人ずつのタレントが本当に努力して、そしてそれぞれの地位を勝ち取っているので、そこだけは本当に失望していただきたくない」
その隣で、新たに就任した元アイドルの社長は涼しげに話した。
「うわさとしては聞いていたが、私自身は被害を受けたことはない。受けている現場に立ち会ったことはない」
同性愛者、もしくは両性愛者の中には、自分の恋愛指向について口をつぐんだままの人もいるだろう。
ここで問題なのは「性的指向」ではない。
密室の中で権力者が少年の耳元で、「これを我慢しないと売れないから」「従わなければ、ステージでの立ち位置が悪くなるよ」と囁き、名声や成功と引き換えに口腔性交、肛門性交といった性的要求に応じるよう、抗えないように追い込み強要することだ。
この問題で世間がより大きな衝撃を受けたのは、権力者がゲイであり、また少年たち1000人以上に性的搾取をしたという前代未聞の事件だからであろう。
ゲイとは性別の自認が男性であり、男性が男性に惹かれる同性愛者を指す。では、ゲイとホモとの違いは何か。
ホモという言葉は英語でホモセクシュアルであり、その起源はギリシャ語の「同じ」という接頭辞「Homo」に英単語の「性」を意味する「Sexual」が合わさったものである。
ホモセクシュアルとは同性愛者のことだが、男性が男性に、女性が女性に恋愛感情を持ち、性的にも惹かれる者を指し、ゲイだけでなくレズビアンも含まれる。
「ホモ」という名称は差別的・侮蔑的に使われてきた経緯があり、第三者から、「ホモ」と指摘されることに違和感を覚える当事者も多い。
同性愛は「性的指向」であり、「性的嗜好」ではないが、「性的指向」と「性的嗜好」は意味が重なる用語である。
「性的指向」とは、人の恋愛や性愛がどういった対象に向かうのかを示す概念で、異性愛が「性的指向」であるのと同じように、同性愛や両性愛も「性的指向」である。
異性愛(ヘテロセクシュアル)とは、恋愛や性愛の対象が異性に向かうこと。
同性愛(ホモセクシュアル)とは、恋愛や性愛の対象が同性に向かうこと。
両性愛(バイセクシュアル)とは、男性・女性の両方を恋愛・性愛の対象とし、バイと略されることもある。
ヘテロセクシュアル、ホモセクシュアル、バイセクシュアルのいずれかの性別を恋愛・性愛の対象に向かうことを「性的指向」という。
「性的指向」は、その人自身が持っている内的要因である先天的性質とされる一方、育った環境によって同性に恋愛感情を育む外的な土壌もある。
その中で同性の魅力的な人と偶発的に出会えば、異性愛の人が同性愛へと走る可能性があり、逆に同性愛者が異性愛感情を抱き得ないというわけではない、とする考え方もある。
つまり、すべての人間は同性愛者になり得るわけで、先天的に異性か同性かといった、いかなる対象とも不可逆的に結びついているわけではなく、後天的にいかなる対象に結びつけられるかが、同性愛か異性愛を決定するであるというのだ。