2月の撃墜事件以来、中国は気球を打ち上げておらず、米政府当局者らは中国指導部が意図的に気球を打ち上げない決定を下したとみている。

 というのも、2023年11月にサンフランシスコで予定されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)でジョー・バイデン大統領と習近平国家主席との首脳会談が予定されており、中国側はそこに向けた配慮をしているのではないかとの見方がある。

米中首脳会談のための配慮

 米首都ワシントンにある戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるクリストファー・ジョンソン氏は米メディアに、こう述べている。

「今年11月のバイデン大統領との会談を前に、中国側が気を遣ったと考えられる」

「気球の打ち上げ計画を静かに止めたことは『前向きな一歩』と受け取れるが、中国が今後気球をスパイ活動の一部であると認める可能性は低い」

 中国がこうしたスパイ活動を行う一方で、米国も中国の軍事的・技術的台頭を抑えるためにスパイ活動を行っている。

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、CIA(米中央情報局)と国防総省のDIA(国防情報局)は、中国のスパイ活動を注視する目的で新しいミッション・センターを新設したという。

 中国の沿岸に偵察機を飛ばし、電子通信を傍受するなどの活動を行っている。同時に、CIAは中国専門家を増員し、中国関連の支出を増やしてもいる。

 FBIもまた防諜タスクフォースを使って、中国が米国内でスパイをリクルートする動きに目を光らせている。

 分かっているだけでも、過去1年間で中国人が米軍基地に侵入したことが12件あったと報告されている。