(国際ジャーナリスト・木村正人)
米ディスカバリーチャンネルやナショナルジオグラフィックの偽造記者証
[ロンドン発]英国でロシア人スパイが暗躍している実態の一端が明らかになった。
米テレビ会社のジャーナリストを装い、ロンドンやドイツ、モンテネグロの動きを探っていたとして在英ブルガリア人のロシアスパイ3人がロンドン警視庁に拘束されていることが分かったのだ。BBC放送など英メディアが一斉に報じた。3人のロシアスパイは、米ディスカバリーチャンネルやナショナルジオグラフィックの偽造記者証を持っていたとされる。
英シンクタンク、ヘンリー・ジャクソン・ソサエティーのエグゼクティブ・ディレクター、アラン・メンドーサ博士は英オピニオン放送トークテレビで「スパイネットワークが彼らだけの可能性は低い。工作員が英国全土に配置され、現地情報を収集するのはごく普通のことだ。ジャーナリストを装えば人々の周辺をかぎ回り、質問しても怪しまれない」と解説する。
BBCによると、国家機密を保護するための国家機密法違反の疑いで2月、ロンドン警視庁に5人の男女が逮捕されていた。そのうちノーフォーク州在住オルリン・ルセフ(45)、ロンドン・ハロー在住バイザー・ザンバゾフ(41)、パートナーのカトリン・イヴァノヴァ(31)の3被告が、同月下旬、19もの偽造身分証明書を所持していた身分証明書法違反の罪で起訴されていた。
この3人は全員がブルガリア国籍を持ち、2月に逮捕されて以来、ずっと勾留されている。身分証明書を偽造と知りながら所持していた罪に問われており、ロシアの情報機関のために働いていた疑いが持たれている。英国、ブルガリア、フランス、イタリア、スペイン、クロアチア、スロベニア、ギリシャ、チェコのパスポートや身分証明書、運転免許証を持っていた。