英空軍第1飛行隊を指揮するジョン・コックロフト隊長(8月3日、筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

バルト海で領空に近づいた50機のロシア軍機を迎撃

[英スコットランド北部ロッシーマウス英空軍基地]8月初め、マルチロール戦闘機ユーロファイター・タイフーンの主要基地である英スコットランド北部ロッシーマウス英空軍基地を訪れた。第1飛行隊がバルト三国の一つ、エストニアでの北大西洋条約機構(NATO)のミッションを終え、帰還したのを取材するためである。

 スコットランド特有の鉛色の空を切り裂くように、轟音を響かせてタイフーンが訓練飛行を繰り返す。8月だと言うのに晩秋のように寒い。英国領空に侵入機があれば、ここロッシーマウス空軍基地からタイフーンが急上昇して迎え撃つ。ロシア軍機の侵入から英国の空を守る最前線基地だ。

 第1飛行隊はエストニアのアマリ空軍基地を拠点に3月から4カ月間、NATOのバルト海領空警備「アゾティズ作戦」を遂行、計50機のロシア軍機に緊急発進(スクランブル)した。バルト三国は2004年、NATOに加盟したものの有効な航空戦力を持たないため、NATO加盟国が領空警備を担当。14年のクリミア危機を受け、アマリ空軍基地が拠点として追加された。

 当初、ドイツ空軍と共同でロシアの空中給油機や輸送機の警戒に当たったが、5月から単独任務となり、計500時間以上飛行したあとスペイン空軍に引き継いだ。ベン・ウォレス英国防相は「数百人の英空軍パイロットと整備員らが数カ月間、家族と離れ離れになって欧州の空を守るため同盟国と24時間体制で働いた」と帰還したパイロットらを称えた。

エストニアから帰還した第1飛行隊の整備士たち(同)