ロシアのSGIタンカー。ウクライナ軍の「水上ドローン」はこうしたタンカーを撃沈する戦果をあげている。写真は昨年3月に撮影されたもの(写真:ロイター/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

ウクライナの海上攻撃は大規模な反攻の条件を整えるのが狙い

[ロンドン発]独立系モスクワ・タイムズ紙や英BBC放送によると、ウクライナ軍は8月4日、黒海で海上ドローンを使ってロシアのケミカルタンカー「SIG」を攻撃した。450キログラムのTNT火薬が使用された。黒海におけるロシア船への攻撃は2日連続で2回目。攻撃されたSIGは、シリアでロシア軍にジェット燃料を供給しているとして米国の制裁対象になっている。

 ウクライナ保安局(SBU)とウクライナ海軍がクリミア大橋の南27キロメートルの黒海でSIGを攻撃、機関室に2メートル×1メートルの穴を開けた。これによりクリミア大橋の通行がマヒした。米シンクタンク「戦争研究所」(ISW)は「ウクライナ軍は以前からウクライナ南部におけるロシア軍の兵站を低下させるためクリミア大橋を狙っている」と分析する。

 ISWによると、ウクライナの海上攻撃は、より大規模な反攻作戦の条件を有利にすることを目的とした作戦の一環である可能性が高いという。ウクライナ当局は黒海に面するロシアのタマン港、アナパ港、ノヴォロシースク港、ゲレンドジク港、トゥアプセ港、ソチ港の停泊地について「軍事的脅威」にさらされていると通告した。

 実際にウクライナ海軍の海上ドローンは3日から4日にかけ、黒海艦隊のノヴォロシースク基地付近でロシア海軍の揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」を攻撃。英国国防情報部によると、同艦は深刻な被害を受けた。船は30~40度傾いており、いくつかの水密区画が破られたか、ダメージコントロールが効果的でなかったとみられている。