米中のスパイ活動が複雑化してきた

 2023年2月、米国が中国のスパイ気球を撃墜したニュースは広く報道された。

 米国側は中国がスパイ目的で偵察気球を打ち上げて米国領土に飛ばしたと解釈しているが、中国側は全面的に否定しており、撃墜事件から7か月経った今も、両国は独自の立場を譲らない。

 9月16日、米首都ワシントンの中国大使館の報道官である劉鵬宇氏は米メディアに対し、次のようにスパイ活動をしていたわけではないことを改めて強調した。

「事件以来、気球は気象やその他の研究目的で使用された無人の飛行船であり、米国領空への進入は全く予期せぬ、不可抗力によって引き起こされたと繰り返し申し上げている」

中国の気球に重要な情報はなかった

 実は気球撃墜直後、バイデン政権は中国指導部と当件で意思疎通を図るためにアントニー・ブリンケン国務長官を北京に派遣する準備を進めていた。

 しかし、米政府はブリンケン長官の派遣を延期する。というのも、FBI(連邦捜査局)が撃墜された気球の残骸を分析したところ、重要な情報は収集されていないことが分かったからだ。

 気球は中国最南端の海南省を離陸し、アラスカ州、カナダを回ってアイダホ州、そして米東海岸に到達し、サウスカロライナ州沖で米戦闘機に撃墜されている。

 当時、CNNは米当局者の話として、気球は中国軍による広範な米国監視プログラムの一環であると報じた。

 というのも、偵察気球は近年、少なくとも5大陸で20回以上も打ち上げられていることが分かっているからだ。

 撃墜された気球は重要な情報を収集していなかったものの、本来はグアムとハワイの米軍基地を偵察するために打ち上げられたことが分かってきている。