「公共メディア」を自称し始めたNHK(写真:共同通信社)

NHKのインターネット事業の拡大が着々と進んでいる。しかし、受信料のあり方の議論を封印したまま、独断専行するNHKの姿勢に理解や共感が得られるのだろうか。NHKが主張する公共性が怪しくなる中、強制徴収の色彩の強い受信料に対する反発は高まるばかりだ。「公共放送」から「公共メディア」へと変貌を遂げ、信頼あるNHKとして存続するには、受信料制度の見直しは不可避だろう。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

インターネット業務を「必須業務」に格上げへ

「放送業界で人権尊重の考えがより浸透するよう、公共メディア・NHKとして、取り組みをさらに徹底してまいります」

 これは9月7日、ジャニーズ事務所が性加害問題について記者会見を行ったことを受けて、NHKが発表したコメントの締めくくりの言葉です。このように、従来の「公共放送」から「公共メディア」に看板を架け替えて、放送だけではないことを前面に打ち出しています。

ジャニーズ事務所の会見についてのNHKコメント
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 また、ホームページでも、「公共メディアNHKは『新しいNHKらしさの追求』を進めます」と、公共メディアとして国民の理解と共感を得ようとしています。

 公共放送から公共メディアへ——。背景にあるのはメディアとしてのインターネットの広がりです。

 総務省の有識者会議は8月、NHKのインターネット業務について、放送を補完する「任意業務」から、放送と同じ「必須業務」に格上げすべきという提言案を取りまとめました。この案を反映して放送法が改正されれば、テレビを持たない人でもスマートフォンでNHKの地上波番組が視聴できるようになるということです。

 映像コンテンツをネットの「配信」で楽しむ人が増えており、放送と配信が渾然一体となっています。その現状を踏まえれば、NHKがネット事業を拡充しようとするのは自然な流れだと思います。ただ、その動きは性急で前のめりな感じがします。

 私はテレビ朝日出身ですが、民放をひいきにしてNHKを批判しようとしているのではありません。客観的な立場で、放送局が視聴者を向いていないような動きがあれば、前回「これはステマと何が違うのか?テレビに横行する『プロダクトプレイスメント』」という記事で民放の姿勢を疑問視したように、民放かNHKかを問わず、問題提起したり、考えを示したりしたいと思っています。

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