国家からの独立や自立とはほど遠い
公務員の給料が税金で賄われているのと構図が似ていますが、受信料は税金ではなく特殊な負担金です。経営資源が税金ではないのでNHKは国家から独立した存在でいられるという建て付けになっています。
しかし、NHKが政治権力から自立していると太鼓判を押せるでしょうか?
NHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員は、衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命します。また、NHKの毎年度の収支予算・事業計画は、総務大臣に提出した後、国会の審議・承認を受けます。つまり、経営の重要事項が国会や内閣との関わりなしに決められない構造になっています。
また、政治の介入を象徴する事象もありました。10月に受信料が1割値下げされますが、これはNHKが主体的に進めたものではありません。菅義偉首相(当時)が2021年の施政方針演説で受信料の値下げに言及し、それを受けて政治主導で実現したというのが実情です。
値下げは歓迎すべきものですが、NHKがアピールする国家からの独立や自立とはほど遠く、受信料徴収の正当性が揺らいでいると思います。
自立のほかに公共性の根幹を成すのは民主主義の発達への寄与です。そのためには人権擁護の精神が貫かれていなければなりません。しかし、ジャニーズ事務所の性加害問題において、NHKを含むメディア全般に対して、人権意識の希薄さが批判の的になりました。商業放送ではないNHKが民放と同じような振る舞いを続けていることへの失望もあります。
この問題は過去のものではなく、現在進行形の重大な問題です。本当に人権意識の高い企業はどこなのか、人権擁護は口先だけではないのかなど、世間の見方は厳しさを増しています。公共放送を掲げてきたNHKが現実にどのような行動を取るのか、視聴者は関心を持って見つめています。